タイトルのできるまで
私が、かぐやの日常のアレコレについてまとめている手帳に、妙な落書きがされているのを発見したのは、かぐやに言葉を教え初めていくらか経ったころだった。[かぐやの日々是ワンダフルライフ]という私が書いたタイトルの上からのたくったミミズが2匹と象形文字もかくやといった何か。
言葉を覚えて浮かれてなんでも書いたのかと思った。気持ちはわからなくもないが、好き勝手になんでも書かれては困るということで手帳を持ち、かぐやの元へ向かう。
「ちょっとそこに座ってください」
そういって私もかぐやの前に正座する。
「どうしてここに落書きしたの?」
手帳の表面を指差しつつ聞くと、かぐやが体をかしげる。これはかぐやが身につけた疑問を示す仕草だ。顔だけでいいのだけど。
「落書きじゃないの?」
コクコクと顔を上下させる肯定の合図。大変苦労したが、肯定、否定、疑問の仕草を理解させたことで、格段にコミュニケーションがとりやすくなった・・気がする。
極細の手帳用ペンを両前足ではさみ、書き始めたものを解読したところ、
・ち○や→ち○やふる
・犬 →ワンダフル
・僕 →ニャンダフル
が正しい。
とのことのようだ。間違っていると言うのは簡単だが、私は素直に感動していた。自分なりに考えて[推量]したことに。アニメやらCMで見た情報を基に考えたんだな。たぶんち○やふるという句に合わせてキャラの名前を決めたのだろうし、ワンダフルも駄洒落の域を出ないだろう。私はしどろもどろに彼に違うことを説明したが、手帳については直さないことにした。このタイトルもまた彼についての日常だったから。




