鏡開き
私のコートはフードつきであるが、使ったことはない。
今年新調したこのコート、初詣に行った折にあまりの人手の多さにカグヤを歩かせるのは危険だと判断し、フードに入れたところ、すっかりお気に召したようで、自分で歩くことがない。太っても知らないからね。フードから頭を脱し、キョロキョロ周りを見渡せば周囲の視線を集める人気者だ。一度子供達の熱い視線にノックアウトされて以来、新調に行動しているつもりのよう。だが無駄だ。彼はじっとしていられず、私の肩を頭をチョコチョコしてしまうのだから。
そんな元旦から早10日。今日は鏡開き。
「えいっ」
の一声と共に木槌で叩く。それを幾度か繰り返す。
細かくなったそれをレンジでチンしてぜんざいにしてみた。
無論、塩分・当分は控えめで。猫に合わせた食事はヘルシーねなんて少しズレたことを思いつつ見ればかぐやは餅と合戦中。手で押さえて食べようにもその手にくっついちゃうのだ。その要素をクスクス笑っていたら睨まれた。結局手や顔に餅がついていて必死に毛づくろいしている。
「元気に1年過ごそうね」
そういって彼の顎をなでる。ゴロゴロとのどを鳴らす音が伝わり、和みつつ今日を終える。




