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陰謀論

 俺は誰にも気づかれぬように天井を歩き、時計の裏側で開かれている会議を覗き見た。


 普段、人は天井を見上げない。足元を見て、横を見て、人と比べ、それで前を向いていると思っている。頭上に世界があるとは気づかない。俺はそこを歩いた。


 時計の裏側には、歯車ではなく、長い机があった。秒針の音は、会議をしている彼らの相槌だった。誰かが頷くたびに一秒が刻まれる。彼らは時間を配給していた。世界中の人間に「もう少し急がなければ」「他の人とズレてはいけない」「足りない」と思わせ続けるために。


 会議の議題は単純で「いかにして、人に上を見上げさせないか」というものだった。彼らが恐れている唯一のことは、皆が天井を歩きはじめ、時計の裏側を見られることだった。文字盤の表側で、針に追われて生きている限り、人は奴隷であって、それを疑いもしない。人は時計を見るとき、時間を見ている。だが裏側に回り込んだ者は、その針が、ただの金属の棒だと気づいてしまう。


 俺は息を殺して、彼らの顔を見ようとした。しかしそこに光はなかった。時計の表側だけが、人々を見るために明るく照らされていた。会議室の薄暗さの中で、微かに見えた者達には顔がなかった。あったのは、無数の文字盤だった。彼らは、自分達も、もっと上の天井から覗かれていることを知っているようであった。

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