8,過去の清算
「むかーしむかし、いやそんな昔でもないか。魔法少女達が世の中で完全な英雄として見られていた頃の話だ」
魔法少女は日々、陰から人間を守るため奮闘し、人々は彼女らを称賛し、もはや崇拝する者たちまで現れた。しかし、ある日事件はおきた。魔法少女の契約書に書かれていた備考により、彼女たちは殺戮を始めたのだ。政府も全力になってそれに対応。その当時、対魔法少女特別指揮官に選ばれたのが理光、簪理光だった。その若さからは考えられないほどの決断の速さ、的確な判断、人間サイドは優勢だった。しかし一人の魔法少女の登場によって戦況は大きく変わる。最悪の魔法使い、紅。人類では対処不能なほどの火力、魔法、技量。奴は俺のいる本部まで襲撃し、俺の部下を皆殺しにした。幸いにも俺は崩れた瓦礫に脚が挟まり、かるい打撲で済んでいた。紅は勝利を確信し、変身を解いていた。
パン!
後ろから頭をぶち抜いてやったさ。
「ハハッ!これで俺達の・・・人類の勝利だ!」
これで俺は功績を称えられ、この国のトップまで上り詰めるだろう。そんな未来の自分を想像するだけでヨダレが止まらない。まずはこのクソほど重い石をどかさねば・・・
近くから瓦礫を踏む足音が聞こえた。
「生存者か!こっちに来てくれ!脚が挟まって抜けないんだ」
そこにいたのは、魔法少女だった。
魔法少女!?このタイミングで?
その魔法少女は俺の上に馬乗りになって聞いてきた。
「なんで・・・こんなことするの?」
俺はすかさず手に握っていた銃を構えた。が腕ごと切り落とされた。
「ぐああああっ!俺ッ、俺の腕がぁ!」
「なんで・・・こんなひどいことを・・・」
ひどい?
「ひどいのは貴様ら魔法少女のほうだろう!我々は共生していくべきだった!だが裏切ったのはお前たちの方だ!周りからチヤホヤされたらすぐこれだ。お前たちのような愚かな奴らほど力を手にした瞬間、全てを欲しがる。人間からの名声だけでは足りなかったのだろう!?そうやって邪魔な奴らを殺しまくって欲しいものを手に入れたいのだろう?独占したいのだろう?」
血が抜けて、頭が回らなくなってきた。
「俺達人間は負けない!死ぬのは未来永劫、お前たちの方だ悪魔め!」
俺は最後の力を振り絞ってその魔法少女の首に噛みついた。
初めてだった。人に噛みつくなんて。初めて知ったんだ。血の味を、人間、いや魔法少女の肌がこんなにも簡単に噛みちぎれるなんて。
「あなたには・・・一生わからない・・・」
魔法少女は俺を振りほどいてどこかへ行ってしまった。倒壊の影響で施設全体が崩れ始めた。もちろん俺の真上にある屋根も。
「覚えたからな!貴様の顔!絶対に許さん!地獄で一生呪い続けてやるぅぅぅぅ!」
施設が完全に崩れ、俺はその13年後に体の半分が機械になって目を覚ました。
起きて初めて感じた違和感はそれもあるが、もう一つは体内から湧き出る謎の力だ。その時俺は体が機会になった影響だろうと気に留めなかった。
「理光さん、普通の人なら即死だったんですがねえ。驚異的な回復力ですよ。まるで魔法少女みたいだ」
医者いわく、体の一部が魔法少女になっているらしい。あの時、あの魔法少女の血を飲んだからか・・・?
魔法少女反逆事件は過去のこととして水に流され、その時の功績などは認められなかった。それから俺は一人でグズグズと過ごしていた。魔法が使えるようになった。土から人形を作り、それに人間の心、魔法少女としての力を与えることにも成功した。成功したのはたったの2体だけだったが。高身長で鎌を持ってる方をミスアバランチ。背が低くて、ショットガンを持ってる方をテクノと名付けた。
もし、俺があの時生き残っていれば俺は今頃こんなボロアパートではなく、高層ビルのてっぺんで悠々と過ごしていただろう。
「なんで生き残っちまったんだ・・・」
生きる目標が・・・
そこで一人の魔法少女を思い出す。
あの魔法少女だ。俺の腕を切った。あいつがいなければ、あそこに現れなければ俺は成功していたんだ。人生を謳歌することができていた。
「だーんだんと思い出してきたぞ、あいつの顔が」
俺の人生を狂わせた魔法処女の顔が。
俺は昔の名前で資料室に入り、魔法少女容疑者リストを見た。
「こいつだ!この女だ!」
春日井つるぎ。腰辺りまでのピンク髪に隣町の学校の制服を着ていた。
「俺の人生は13年前にもう終わっている・・・思い残すことも、望むものもない。こいつに復讐さえできればそれでいい」
それからミスアバランチとテクノを使って隣町を索敵させたが有力な情報はなく。
―――
「それで!俺はお前たち魔法少女が春日井つるぎを匿ってるんじゃないかって思ってねぇ!それに陰は俺が呼び寄せたものだ。この人形共を作ってからアイツら妙に俺に寄ってくるのよ。だがそれが逆に良かった。こんだけ陰がいれば春日井つるぎも正義感から姿を出すだろ―?ってもう聞こえちゃいないか」
理光の目の前で聖奈はすでに全身から血を流しすぎていた――。
有里瞬です。
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