44,死神
山村で一泊を過ごし、恩返しとしておじいさんの身の世話や田んぼの手伝いなどで恩返しをし、車を出してくれると言うのでお言葉に甘えて、街まで出ることにした。
「すいません、車なんか出していただいて」
「構わんね、買い出しついでにそこまで送っちゃる」
こんなこと昔もあっただろうか、ふと脳裏に過去の情景を思い浮かべる。きっといつもそこにはお姉ちゃんのお母さんがいるのだ。
私にはその人をお母さんと呼ぶ資格も、勇気もない。
「昨日の話の続きになるが・・・親っつう肩書をもった人間が1人になる瞬間てのは大抵ひでえもんだ、ワシも昔バカやってよ、今はあんなとこ住んでっか、本当はカミさんと街中にいたんや。そん時に耐えられなくなってな。今は後悔しかしてねえ」
横顔はうまく伺えない、しかし声音から推測することはできる。
「会いに行けばいいじゃないですか、きっと――」
その人も、あなたに会いたがっている・・・?
何故か口からこのセリフが外に出ない。
「もう遅えんだ。気付いたときには何もかも。んなことに気づくんに、こんな老いぼれになるまでかかっちまった」
そこにはお前も後悔はするなという強いメッセージを感じる。いやきっとそう言っているのだ。私は今、きっと後悔しようとしている。このままただ生きていけば私はこの日を永遠に後悔するだろう、忘れないだろう。私に必要なのは勇気と覚悟、今を、もっと今を生きなくては――。
「・・・なんだか嬢ちゃん、昨日とはちげえ、えらいええ顔しとんな」
そこから私とおじいさんとの間に会話はなかった。駅まで送ってもらい、手を振ってお別れをする。きっともう会うことはない、でもあの人は私の背中を押してくれた、かけがえのない人、さようなら。
―――
「次は~薪波~薪波~」
電車のアナウンスで私は目が覚めた。刻は夕方、夕日が差し掛かり、そろそろ陰が出始める時間帯で、電車は停車し、駅員も運転手も帰りの支度をする。駅のホームに降りて一望する。
まだ夕方なのに、ホームには人っ子一人おらず、殺風景で冷たい風が吹いていた。
・・・なぜ、いつも見る風景なのに、何の変哲もない風景なのに、こんなにも気を取られる。
「なんか私・・・変だ」
改札を通り、夜は魔法少女の力で家の屋根を伝い移動する。夜は陰の世界、一般人は立ち入れず、ほぼ私一人の世界。
私1人だと、そう思っていた。
何も気にせず、夜の世界を駆けるつもりだった。
そして、陰と出会った。




