43,新時代
生き残ってしまった。このセリフを聞くのは何回目だろう。
他の魔法少女たちを退け、生き延びたということはその過去に囚われ続けるということだ、忘れてはいけない、逃げることなどできない。紅動乱の死者は延べ2万5000、その殆どは後日に処分として死亡している。
あれから日本は悲しみが広がっている。自分の一人娘が実は魔法少女で東京で、病院で無惨な姿で発見された、なんていうドキュメンタリーが後を絶たない。私、浦賀聖奈もあれから家に帰っていない。
場を和ますお日様みたいな笑み、気が緩む優しい声、あの女性は1人で私とお姉ちゃんを育てていた。今1人ぼっちとなってしまったあの家に行くのがとても怖いのだ。
なぜあなただけが生きているのか、と。
もしそんなことを言われたら私は――。
春日井つるぎさんたちと別れてから私は1人で日本中を回っていた。私は生まれつきの魔法少女なので身分を確認されようが拘束されることはない。もうこの国に私を傷つけるものはないのだ。それと同時に、私は何故、どうして生きているのかを再確認してしまう。今日も夜な夜なとぼとぼと歩いていたら声をかけられた。
「そげなとこで何をしちょる、ここらは明かりもないでうちで休んでいき。ここらは陰はそー出んが熊が出るぞ」
その人はただのおじいさんだった。山に囲まれた田舎村で、その善意を無下にすることもできず、私はお邪魔することにした。
「ん・・・」
気づかぬうちにうたた寝してたらしい、私には毛布がかかっていた。その傍ら窓辺でタバコを吸っているおじいさんがいた。
「あっあのすいません、寝てしまって・・・」
「構わんね、こんな広い家にワシ1人やと気が滅入っちまうでね、どこでも好きなとこで寝なね、それよか嬢ちゃん、あんた泣いとるで」
何故だろう、怖い夢を見たわけでもないのに。
「嬢ちゃん高校生か?どこから来たね、旅か?」
「ええと・・・はい。まぁそんな感じです」
「・・・親となんかあったかい、寝言がだいぶ酷かったでな」
どうやらそれで泣いてたらしい。
「私・・・なんて言ってましたか?」
「ごめんなさいごめんなさい・・・ってなんや反抗でもしたんか」
きっとそれは私だけ生きていてごめんなさい、ということだ。
「そういうんじゃなくて・・・」
なんて説明すればいいだろうか、出来の良いお姉ちゃんと出かけて事故をし、不出来な私だけが生きて帰ってしまって親に合わせる顔がないといった感じだろうか。私は今のニュアンスで語り始めた。
「そりゃ・・・ワシだったら生きててくれただけ、それだけでええがな。出来が良かろうと不出来だろうと嬢ちゃんが娘ってのは変わらんのや、嬢ちゃんがその家でどんな仕打ちを受け取ったんは知らんがそんだけで会わんてのはそのお母さんも可哀想じゃ」
あの家で私はたくさん食べさせてもらった、触れてもらった、世話をしてくれた。まだその恩返しを何も出来ていない。私はただお姉ちゃんといられればよかった。それなのに・・・
そう思いながらあの家で起きたこと、思い出を振り返っていく。
あの家、あの生活にお姉ちゃんも、そのお母さんも必要だった、彼女たちがいたから、今の私がいるのだと気づけた。
「ですよね・・・でもどうやってなんて言えば」
おじいさんはニッと笑って言った。
「小難しいこといちいち悩む子じゃな、そりゃただいまじゃろ。色々とすんのはそん後じゃ」
有里瞬です。
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