42,語り部と未来
私はこの人たちを知らない、でも何かお互い感じ合う、惹かれ合う、同じ何かを感じる。
「手荒な感じにはなっちゃうけど、あなたには生きてほしいから」
春日井つるぎが聖奈の手に何かを渡してきた。
「?」
それはビー玉だった、何の変哲もない普通のビー玉。ビー玉から空を覗くとなんだか懐かしい気分になる。
「裏に車があるから裏口から出てそれに乗ろうか」
「その記録を見られたら僕の首が飛びかねん、そんなに堂々と廊下は歩かせないよ」
「どーすんだつるぎ」
「飛び降りましょうか」
春日井つるぎは完全にノープランだったと言わんばかりの勢いで聖奈を抱えて飛び降りていった。
「じゃーな院長、これは口止め料だ」
そう言って少しだけ分厚い封筒を渡した。
院長はため息を吐くと「全く足りないよ」と言うのであった。浦賀聖奈の殺処分書類の偽造にこの金額の倍以上かかったのはまた別のお話。
―――
「アリスさん、今私運転してるんですから聖奈ちゃんに説明してあげてください」
「んにゃ?本当に言っちゃっていいの?知らないほうが幸せって言葉もあるよ。このまま日本で唯一の魔法少女達のドライブしないか」
「きっと・・・お姉ちゃんのことですよね?聞きたいです」
ジョークが完全に無視されペースを崩すアリス。
「泣き出してもティッシュ持ってないからね?」
そうして海辺の道路を走りながら語り部は語りだす。
―――
紅は魔獣の域へと達していた。
紅は地球の最大エネルギーでも殺せないほどの存在になり、手がつけられなくなった。残されたのは紅の気が済むまで暴れるか、地球の中心コア近くまで埋めて封印するしかない。後者は不可能事案であった。
しかし紅は動きを止め、自ら石化したのだ。これは古の言い伝えだが生贄を捧げて怒りを収めるというオカルトじみた方法と酷似していた。
その生贄となったのが松本菊花である。
「これがお前さんの言うお姉ちゃんって子だね」
そうして紅は動きを止め、いつ目覚めるかもわからない石となったのだ。よって東京、紅の半径30キロは閉鎖、隔離という結末になった。
あの惨劇で生き残った魔法少女は少なくとも100人はいた。が殆どは救助作業に紛れて殺され、カモフラージュのため数少ない魔法少女が地方の病院に飛ばされた。その後は紅の責任にして全魔法少女を殺処分するプランであった。
「まぁ君だけは救いたいってこの子がうるさかったからね」
「じゃあ・・・お姉ちゃんはその紅の中にいるってことですか・・・?」
「その可能性は限りなく低いと思う。遠くから見た時点で彼女は精神的にも肉体的にも満身創痍だった」
運転していたつるぎが包み隠さず言ってきた。
「見てたならッ・・・!助けてあげれたんじゃ・・・?」
「・・・ごめん」
わかる、きっとその紅はとんでもなく強くて、そうするしかなかった、仕方なかったってやつだ。でも言い訳をせずこの人は謝ってきた。
私は顔も思い出せない偽物の姉、思い込みの姉をなぜこんなにも求めるのだろう。
有里瞬です。
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