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29,■■■■

最悪の魔法少女、紅。本名不明、出身地不明、素顔不明、動機不明、能力不明、そもそも人間であるのか?不明。人間とは思えないほどの巨躯、牙、爪。これは紅の過去の話。


―――


紅、本名「槇田茜(まきたあかね)」影の薄い、引っ込み思案な子だった。幼稚園の頃からいるのかいないのかわからないような子で、一度たりとも笑うことはなかった。それは小学生になっても、中学生になっても、高校生になっても変わらなかった。高校生になったある日、茜は闇を見た。この世界の行く末を、この世界の終末を。まだその時、彼女は魔法少女ではなかったが、潜在的な力が彼女に闇を見せたのだ。その闇は毎日のように見ることになった。病院にもいったが相手にされることはなかった。人々の叫び、泣き声、臓物のちぎれる音。日に日にそれは鮮明になり、どっちが現実でどっちが闇か区別できなることも多々あった。それでも彼女には光があった。

「おばあちゃん・・・」

柔和な笑みを浮かべ、いつも頭を撫でてくれる。唯一暖かい、私の居場所。ここでしかきっと私は生きられない。

ある日、スーツを着た複数の人たちが家に押しかけてきた。どうやら病院で取った私のCT検査の結果から魔法少女にならないかと説得してきたのだ。もちろん私は拒否したが、全く食い下がらず私は逃げ出したくなってしまった。助けておばあちゃん。助けて――!

「茜、ここにサインするんだよ」

「・・・へ?」

おばあちゃんが私の横に座って言った。おばあちゃんが入ってきた扉の向こうには黒いアタッシュケースが置いてあった。

「書けるね・・・?」

おばあちゃんはいつもの笑みで言ってきたが、ニヤけており、瞳の先には私は映っていなかった。

書くしかない。書くしかなかった。魔法少女って何?私の人生どうなっちゃうの?誰が私を助けてくれるの?

その日の夜。茜は闇を見た。いつもとは違う、暗闇におばあちゃんがいる。そして私はおばあちゃんに向かって一歩ずつ歩き出す。

「茜、茜、こっちおいで。おばあちゃんとみかん食べよ」

おばあちゃんだ。

「茜、最近またべっぴんさんになってー、好きな子とかおるんか?」

おばあちゃんだ。おばあちゃんだ。

「おばあちゃんがもっとしっかりしとったら茜にも楽させれるんやけどなー」

おばあちゃんの目の前にたどり着いた。

あぁ気持ち悪い。この笑い方が、口が、歯が、目が、その顔が。

「あか――」

茜は自分のおばあちゃんの首を絞め、持ち上げた。魔法少女になったことでこんな老体くらいなら軽々持ち上げられるようになった。

「がッ・・・グッ」

おばあちゃんは泡を吹き、白目を剥いて、気絶した。いや首の骨を折って殺してしまったかも。でもいいじゃないか闇なんだから、どうせ夢なんだから。

「――はっ!」

目が覚めた。

「?」

左手がベッドの外に出ていて、何かを掴んでいる。寝る前に何か持っていたっけと茜は不思議に思い、手の先を見るとおばあちゃんを絞め殺していた。そしておばあちゃんの手には包丁が握ってあった。

私はその後、何したんだっけ・・・?

有里瞬です。

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