17,今、手を握ってあげるから
私は本当は魔法少女になるはずだった。
お母さんは風の噂か国が正式に魔法少女制度を復活させる、という話を聞きつけ私に猛烈に魔法少女についてアプローチしてきた。私はその時は子供で詳しくはよくわからなかったけど、お母さんが喜ぶならそれでいいと思っていた。
でも国は合意のある少女を魔法少女にしているらしく、一般人である私は門前払いの対象だった。お母さんは必死になって国の機関に電話をしていたが国は秘密裏に行っていたためもちろん黙秘。少しお母さんは痩せた気がする。お父さんも最初は応援していたが、この頃からお母さんへの態度が悪くなっていた。でもこんなのはまだ序の口だった。
次にお母さんは民間のよくわからない宗教に手を出し始めた。どうやら魔法少女になる方法を知っているだとか。家にあった物を売り始めて、家からお金がどんどんなくなっていった。そんなお母さんに対してお父さんはいい加減にしろ、と毎夜怒鳴ることになった。その時の私はもう中学生で私もとっくに気づいていた。お母さんはおかしい、なんで私をそんなに魔法少女にさせたいんだろう、そんなに特別にさせたがるんだろう。そんなことをしてもお母さんは特別になれないのに。
たまに夜の窓から見えるCGみたいなあのキラキラした服や髪を見て、魔法少女を見て少しだけ憧れたのは事実なんだ。お母さんが横に来て一緒に見ることもあり、魔法少女が見えるたびに涙を流していた。昔、お母さんと魔法少女の間に何があったのかは知らないけれど、私はそれを聞くことはできなかった。私にそんな勇気がないのもあったけど、その翌日からお母さんは家を出ていったからだ。それからお父さんと2人きりでお母さんが物を売ったせいで質素な生活していて高校生まで育ってきた。
今になってもわからない、なんでお母さんはあんなに取り憑かれたように私を魔法少女にしたかったのか。日に日に増える痣を隠しきれなくなった私は学校を休み、お父さんは学校にバレたくないのか私のスマホを隠した。でもその時に菊花ちゃんが来てくれた。お父さんには誰が来ても出るなと言われていたけれど、一言話したかった、ドア越しでなく直接見たかった。見た瞬間、ホッと安心できた。心の傷も、痛みも全部が和らいでいくような。でももう菊花ちゃんは来れない、お父さんは今まで以上に私を監禁するだろう。それも仕方ない、そういう運命なんだ私。
いやだ
気がつけば夜の外を走り出していた。裸足で、パジャマのままで。夜空は綺麗で、自分が何に悩んでいるのかわからなくなるほどそれは神秘的だった。
いやだいやだ
こんなにもこの世界の夜は綺麗なのに、陰のせいで夜をまともに歩けないなんてもったいない。
いやだいやだいやだ
そうだ、菊花ちゃんに会いに行こう。あの時本当はもっと話したいことがあったんだ。夏休みにあったこととか、冬休みのこととか、進路とか。
ペチャッ。
「あ・・・」
雨なんて降ってないのに足元に泥がある。裸足だからより一層感触でわかりやすい。でも私は知ってる、これは泥なんかじゃない。夏休みの前にも一度出会った。
「陰」
こんなにもこの世界の夜は綺麗なのに。
今度はCGのような光は瞳に映ることはなかった。
ぐしゃ
有里瞬です。
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