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16,今ある日常を

あの夜から陰は本当に3日に一体というペースでしか来なくなった。菊花は学校が始まり、聖奈は家ではお母さんの手伝いをしているらしい。最近は料理にハマっているとか。

「有栖ー、なんだ今日も休みか」

唯一と言っていい学校での友人の有栖が始業式以降学校に来ていないのだ。

そういえば始業式の時も元気なかったなー。

・・・あれ?

「あっ、そういえば夏休み。一度も有栖と遊んでない」

最低だ、アタシって。

気づいてしまってから頭を抱える。有栖が学校でアタシ以外と学校行事のこと以外話しているのを見たことがない。きっと夏休み中今か今かとメールを待っていたかもしれない。だから始業式のときあんなに愛想無かったのか!

「菊花ー、お前仲良かったろ、あいつ学級委員だから、これ渡しといて」

「行きます!絶対いきます!」

行かしてください!


―――


放課後にたどり着いたのは、家からあまり遠くない質素なアパートだった。

そういえば、有栖の家に来るのも初めてだ。

「アタシって、有栖のことなんも知らねー・・・」

インターホンを鳴らしても反応がない。壊れているかと思ったが音は鳴っている。留守?

学校の書類をポストに入れようとしたが宗教の勧誘チラシやもはやどこの店のクーポンか分からないもので詰まっていた。

「大丈夫か・・・ま、明日また来るかー」

扉に背を向けてから扉がガシャンと思い切り空いた。

「菊花ちゃん!」

「よ、有栖」

気楽に返事をしたものの、有栖は顔に絆創膏や目に見える痣があったので、少し戸惑ってしまった。

「有栖、学校来れないのか?」

「いやそういうわけじゃなくて、ただ・・・菊花ちゃんと話したかった」

「いーよ、夜になる前に話そうぜ」

きっと有栖にはアタシにも言えない事情があるのだ。それがどれだけ酷いことだろうと、アタシにその話に踏み込む鋼の心はなかった。

「いや・・・菊花ちゃんの顔見たら安心しちゃった。学校にはそろそろ行くよ。だからもう帰らないと―――」

ボロいアパートの軋む階段の音。誰かが上がってきたみたいだ。

「・・・父さん・・・」

上がってきたのはどうやら有栖の父親らしき人。スーツ姿でニッコリしながらアタシと有栖を見てきた。

「ごめんなさい父さん、私」

「君は・・・有栖のお友達かい?わざわざ済まないね。今私達の家は大変でね。学校に言っている場合ではないんだよ。もう日も暮れてきた。帰りなさい」

「だったら学校に電話くらいするのがいいと思いますけどね」

先生は有栖が学校に来ていない理由を知らなかった。有栖に何度もメールしたが帰ってこなかった。そして――

ティロン。

「なんでお父さんが有栖のスマホ持ってるんですか?」

この男・・・

ぎろりとお互い見合う。

「やめて菊花ちゃん!私は大丈夫だから!」

・・・

「帰ります。失礼しました」

アタシはその場を後にした。


―――


「有栖、私がいないときは外に出るなと言ったはずだが」

「ご、ごめんなさい。でも友達が来てたから」

有栖の父は持っていたビール缶を投げつけてきた。

「口答えするな!お前さえ産まれなければ母さんは!トモエは死なずに済んだんだ!お前の!お前のせいだ!」

有栖の父は有栖を蹴飛ばし、頭や胸を蹴りつけた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」

最後に腹に蹴りを入れられ、有栖は吐いてしまった。

「拭いておけ!くそっ!」

―――あぁ、私って、なんで産まれてきたんだろう。逃げたらどうなっちゃうのかな。この真っ暗な夜に飛び込めたなら。魔法少女みたいに。


有里瞬です。

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