14,平正人という男
契約書の対象はなぜか少女のみに限定されている。ではその他に分類される人間は魔法を扱えないのか?男が契約書に血印を押しても無効、更年期の女性がやっても無効。日本はどうにかして魔法少女の力を軍用にできないか試行錯誤を繰り返した。発見されたのが魔法少女の血液を摂取することで身体に科学では言い換えられない不可解な現象が起きた。未知の生物(ここではXと呼ぶ)が次々と体内の組織を食っていくのだ。幸運なことにXは時間とともに消滅し、命には至らなかったが、血液を摂取した場所が腫れる、頭髪が抜ける、五感がしばらく機能しなくなるなど体に不調を残していった。ただ一人を除いて。
「すごい・・・体内のXが完全に生き残り、それでいて組織破壊を起こしていない・・・すごい!すごいよ平くん!」
平正人という男一人だけがXに適応した。彼は一般的な学校を卒業し、一般的なオペレーターであり、特別なにかあるわけではない。ごくごく普通の一般人だった。扱う魔法は――
「――腐食、この世界に大気がある限りお前の体は錆び続ける」
紅の足元から次々と茶色い錆ができ始める。紅は力強く足を引っ張るが錆は自分の身体にできるものなので引っ張っても意味はない。手を合わせて魔法を使おうとしても手を錆らせる。
「何をしようとしても無駄だ、この世界にいる限りな」
平は胸ポケットからタバコを一本取り出し、火を付ける。
「フーッ、対処完了」
紅は頭の先の先まで、体の全身が錆になってしまった。と思い込んでしまった。ピキピキと錆になりながらも少しずつ動き錆を剥がそうとしている。今までにこんな奴は見たことない。
「念入りに穴という穴まで――」
ヒュッ
なんだ?今何かが俺の頬をかすめた。触れると手には血がついていた。
ここに来る前に怪我でもしてたか?さっき紅の攻撃を一撃でも食らったか?いや反撃の余地は与えなかった。動いて錆が剥がれるその一瞬、コンマ秒に値するその時間、紅の肉体が一瞬空気に触れる。
そこからなにか発射している!?
紅がまた少し動き出した。そして今度はしっかりとその瞬間を捉えた。肉体から一瞬出てきたのは銃口、散弾銃の類のものだ。
俺は咄嗟に横にあったシールドを錆らせて守りに使った。
「なんてバケモノだっ!」
嫌なことには嫌なものがつきまとう。
「雪・・・報告にあったやつか!」
平は雪に当たる前に近くにあった死体を錆らせ上に被せることで雪の熱から身を守った。
おかしい、なぜさっきから紅の攻撃は激しくなっている?錆らせる力は緩めてない。なのにこの雪もそうだ。錆の盾のせいで今、紅がどういう状況になっているかわからない。しかし盾をどかせば確実にやられる。どうするどうすれば
「?」
攻撃が止んだ。紅が逃げ出したのか、それとも誰かが助けでも――
「来るわけがない、なぜなら誰もお前を殺すことはできないからだ」
紅は錆を全て剥がしていて既に目の前にいた。魔法はかけているが、もはや効いていない。
「ッグウッッ!」
完全なる左フック、人類には出せないパワーで壁まで吹き飛ばされた。
紅が近づくとそこには完全に錆になった人の形をしたものがあった。
「・・・すごいね、あれが最悪の魔法少女、紅」
「誰も勝てないなあれ」
その全貌を陰から見るコノハとつるぎだった。
有里瞬です。
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