12,春日井つるぎ4
「わざわざ俺が首が飛ぶリスクを犯してまで奏をリストから排除したのに、静かにこの街から救出するはずだったのに、あの魔法少女、春日井つるぎ。なんで殺した。奏を、俺の妻をぉ」
彼、浦賀学は後に国会議員となり、彼のこの感情が後にとある事件を引き起こすことになる。
学は携帯を取り出し、電話をかける。
「俺だ、東方向に魔法少女が一匹。何かを抱えていた、大型の武器かもしれない。気をつけろ。そいつの首を俺の前までもってこい」
―――
追手が来ない。でもこのまま逃げれるほど甘くないとは思ってる。さっきから気になるのはかすかに人の気配が――
「え?」
路地裏から出た先には網が。
「罠!?」
網は動けば動くほど複雑に絡み合い、更に脱出を困難にする。
「魔法、分解!」
春日井つるぎの魔法は分解。触れたものが単純であればあるほど分解しやすい。網なら一部の紐をほどいて抜け穴を作り出せる。
でも、なんで罠だけ?罠にかかった獲物を狩る人がいるはずなのに。まさか――!
気づいた時に引き金は引かれていた。音が鳴ってから反応するには、その弾丸は早すぎた。
スナイパー。避けきれない!
「こちらシータ、目標を・・・?なぜあの魔法少女生きてる」
俺のスナイパーは上司の命中率を抜いてトップだぞ?この距離で外すはずがない。しかも位置がバレた。スナイパーとして位置がバレるのはよろしくない。
ヒュン、ヒュン
何だ?この風を切るような音は?何か速いなにかが俺の周りを飛んでいる。
「ッ!」
頬を切られた!?
次に服を腕を脚を次々と切られていく。
逃げろ!これは魔法。しかもあの魔法少女のものじゃない。本体がいないのならば勝ち目はない!
走れない。腱を切られてる。思い出した、この切り傷、不自然なほどまっすぐに切れるこの現象を。
「紙、か」
最後に視界が完全に途絶え、俺は死んだ。
―――
「この紙は・・・?」
「私だよ、つるぎ」
紙が喋ってるわけじゃない。微々たる魔力が脳内に直接話しかけてきてる。
「コノハ・・・さん」
一部、弾丸の跡が見える。さっき弾が当たらなかったのはそういうことか。
「私の魔法だよ、肉体はないけれど、紙で生き永らえることができる」
コノハの魔法は紙、作ることもできるし、紙に魂を移し、紙に憑依して紙として行動することができる。その間に肉体のほうが駄目になると、一生紙のままという問題がある。今まさにそれだ。
「さっきついでに見てきたよ、ここら一帯はもうだめだ。逃げられない。辺り一面、警察と自衛隊が取り囲んでる」
聞きたくない言葉だった。裏路地を走り続けていたらいつかこの赤ちゃんだけでも逃がせれると思っていた。がそれは夢物語だった。
「ねぇコノハさん、私達なにかしたかなぁ、私達がわるいのかなぁ」
まだ年端もいかない高校生、心を折るには十分すぎた。
コノハは思った。
私は紙だから何もできない。つるぎを慰めることしかできない。もし奏ならなんて言うだろう。生まれてすぐ親に捨てられて、愛情を知らず生きてきた私が、今のつるぎに気の利いた心温まる話をできるだろうか。
「じゃあ死ぬ?」
それはさらっと口から出てしまった。口があるわけではないが。
「諦めて死ぬ?今この状況を変えられるのはつるぎしかいないよ。つるぎが諦めれば私も、その赤ちゃんも殺されるだろうね。その責任から逃れて死んじゃえばいいよ」
つるぎは今一度、更に強く赤ちゃんを抱きかかえた。
「なんだ、まだ諦めてないじゃん。助けたいんでしょ?その赤ちゃん」
つるぎは涙を拭き、立ち上がった。
「この子だけは絶対助ける。それが唯一、私と奏先輩の約束。私と先輩を繋げるもの」
―――
「南側に待機していたシータと連絡が取れない。2から3番隊まで出るぞ。おいそこのお前!なに突っ立ってる!持ち場はどこだ!」
明後日の方向を向いていた1人の隊員にがいた。さっきからそこにあんなやついたか?
その男がありえない角度でこっちを向いた。
「■■いぃはぃぃい■??オッ?」
その顔は人のものではない。目は黒く、口も垂れている。
「なぜ魔法少女がここにいる・・・」
その人外は膨らみ始め、破裂し始めた。その中から現れたのは、最悪の魔法少女、紅だ。
有里瞬です。
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