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11,春日井つるぎ3

入刀の瞬間。こうなる覚悟はできていた。コノハに作ってもらった厚い紙を咥え、あらゆる液体を吸うための紙を近くにおいて、そして結局最後には自分の武器を呪った。あぁなんで私の武器はこんなにも私のお腹を切りやすい短剣なんだろうって。

「奏、本当にやるの?こんなの赤ちゃんが死ぬだけだし、奏も・・・あと少し頑張ればもっと安静にできる場所が」

「コノハ、彼らは本気なのよ、もう助からない。辺りの施設、道にすら自衛隊がいる。だから誰が生きるべきなのか、私はもう決めた」

「わからない、わからないよ奏。赤ちゃんってそんなに素敵なもの?そんな小さな命より、奏が生きてくれたほうが・・・私は嬉しいし、そっちのほうが楽しいよ?」

コノハはまぶたから溢れる涙は光って落ちた。その涙にはなんの悪意もない、純粋なコノハの気持ちなのだ。

「親からも反対された時、それでもって私は大学をやめてでもお腹の子(このこ)を育てるって決めたのだって、せっかくこの世界に生まれてきて何もできず、誰にも愛されず・・・それってとっても悲しいことじゃない?だから私だけでもこの子の味方に、寄り添える人間でいたいの。これは完全に私のエゴだし、生まれるこの子の人生はきっと辛いものになる。だからコノハとつるぎで守ってあげて」

奏は集中して執刀を始める。剣先に魔法を込め、すこしでも痛みを和らげる。帝王切開のやり方だ。奏は周りの魔法少女がパトロールに行っている間、一人で妊娠関係の知識を読み漁っていた。

しかし麻酔もないこの手術は奏の痛みに我慢できるキャパをとうに超えていた。ものすごい脂汗と涙。コノハが隣で血をふき取ってくれるが血は止まらない。

それから何度失神しかけただろう。手術は成功し、赤ちゃんが生まれた、が泣かない。奏はもう限界、今すぐ医者に見せないと彼女はもう――。

「いき・・・て、せ・・・な」

奏が生まれた赤ちゃんに触れ、魔力を注ぎ込んでいる。魔力を代わりに生命力に変えようという魂胆だ。常人じゃ死んでいる出血量、それなのに生きているのは奏自身も魔力があるおかげで辛うじて生きている。それすらも無くしてしまったら。

「・・・えーん、えーん!」

産声を上げた!

コノハは紙を生成し続け、少しでも厚みを増やし、赤ちゃんを温めた。

「コノハさん、奏先輩が・・・」

産声を聞いて戻ってきたつるぎが見たものはすでに息をしていない――。

「つるぎ!この子をお願い。私が奏を助ける」

コノハの魔法は紙を作り出す魔法。紙で傷口を内部から埋めていく。

そして私の魔力を注いで生命力に変換させる。

「戻ってきて奏、せっかく生まれたのに、こんなことってないよ」

あと少し、あと少しできっと意識を取り戻す。あと少しで――。

パアン。

それは銃声、そして撃たれたのは

「コノハさん!」

コノハは首を撃たれ、瀕死になった。

「こんな日に、赤ん坊の声がすると思ったら、魔法少女か。この義賊どもめが」

路地裏の先には自衛官が一人。赤ちゃんの泣き声のせいで位置がバレてしまった。戦う?逃げる?それとも・・・いや、もう生きている意味なんて。その時、赤ちゃんの顔が目に写った。まだこんなに弱々しく、世界の何も知らない。そして奏先輩が死んででも生きていてほしいと願ったもの。

つるぎは目を瞑って、せめて赤ちゃんだけは守ろうとしたが2発目は来なかった。

「か・・・奏?」

どうやら奏を知っているようだ。

今のうちに逃げないと。この奏先輩の子を助けないと。

つるぎは走って、裏道を曲がりくねり。常に赤ちゃんに魔力を注ぎ続けないとこの子は死んでしまう。そのせいですぐ疲れてくる。

「はぁはぁ」

しかしさっきの自衛官は来ない。

知り合い、奏先輩の。どういう関係?


―――


「なんで・・・奏、奏が自殺なんてするはずがない・・・あの魔法少女」

自衛官はすぐにリストを調べ、特定する。

「春日井つるぎ・・・許さん、許さぁん!」

奏の夫、陸上自衛隊幹部、浦賀学(うらがまなぶ)


有里瞬です。

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