10,春日井つるぎ2
13年前に起きた魔法少女反逆事件。その時私はまだ高校生だった。
家から、親から、世界から逃げたくて、そのまま成り行きで魔法少女になった。その時は魔法少女はまだ日本中にいたし、大して珍しいものではなかったが、すこしだけ特別になることができた。その心地がすこしだけ心の靄を晴らしたのを今でも覚えてる。
色々な人と会った。潰れた廃コンサートホールでみんなと生活した。楽しかった、すごく楽しかった。ずっと続けばいいと、そう願っていた。そして事件は起こる。
日本中の魔法少女が人々を無作為に虐殺し始めた。老若男女問わず子供も殺した。コンサートホールで一緒に過ごした魔法少女だけが正気だった。それでも魔法少女は魔法少女。政府の決断は皆殺し、私達は何もしてないのに、おかしくなってないのに指名手配された。みんなでどうするかを話し合った。政府と戦う者、逃げる者、説得しに行く者。私は最後まで決めあぐねていた。何もわからなくなって思わず地下の舞台倉庫で座り込んだ。その時だった。廃コンサートホールに大爆発が起きて、自衛隊が侵入してきたのは。大きな音に振動、そして乾いた発砲音。いくら魔法少女とはいえ、体は生身の肉体。銃弾を防げるほど頑丈ではない。それに攻め込まれたのは朝。魔法少女は月が出てなければ変身ができない。よって撃たれているのは抵抗することさえできないただの女の子たちだ。
「怖い・・・どうしてこんな・・・っ」
「つるぎ、こんなところにいたのね。立って!早く逃げるわよ」
このコンサートホールで最年長で大先輩の浦賀奏先輩が手を取って私を引きずるように走り出した。その後ろには折り紙の魔法を使う寡黙な少女コノハもいる。奏先輩は大学生だったがある理由で中退している。
「奏先輩、そんな走ったら・・・お腹の赤ちゃんが」
普通なら病院のベッドで安静にしてなきゃいけないのに、魔法少女のニュースのせいで病院も信用できなくなって先輩自身が自宅出産を選択した。だがもうその居場所さえもなくした。今はただ逃げるしかない。私達の居場所は奪われた。簪理光という男の作戦によって。
私達は夜まで路地を渡って、そのうち歩き疲れて止まった。さっきから薄々気づいていたが奏先輩の脂汗と嘔吐が激しい。もう限界なんだと身体全体が訴えている。
「つるぎ・・・ちょっと遠くに行ってもらっていい?」
これは先輩なりの優しさなんだ。
「コノハ、大量の紙を、分厚くて噛み切れないほどの・・・」
私はその雰囲気だけで吐いてしまった。
「つるぎ・・・行って」
耳をふさいで、唇を噛み締めて。なんで私達がこんな事になってしまったんだろう。
有里瞬です。
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