9,春日井つるぎ
「理光様、春日井つるぎを発見しましたのでご報告を」
傷を負ったテクノがスッと現れて言った。
「ん、ご苦労。だがこちらから行く必要は無さそうだ」
テクノのさらにその後ろ。顔が包帯で覆われた魔法少女が一人。
「ようやく会えたな!春日井つるぎぃ!絶対会えると信じてたぜ、俺達は運命の糸で結ばれてるからな。まずはお茶でもするか?俺が辿るはずであったサクセスストーリーに華でも咲かせるかー!?」
「な、なんであなたがまだ生きてるの」
春日井つるぎはとても驚いていた。あの瓦礫に押しつぶされて常人なら確実に死ぬであろうあの状況でこんなにも原型を留めて生きているなんて。
「言っただろー、俺達は運命の糸で結ばれてるって。お前が生きてるなら俺も生きていても不思議じゃないだろ」
「この大量の陰はあなたが・・・!?」
「理光だ。もちろん俺が引き寄せちまってるみてーだな」
「止めて」
「無理だ、知らねぇ」
春日井は理光に向かって駆け出し、その途中にいたテクノをバラバラにした。だがその攻撃はミスアバランチの鎌によって止められた。
「よくやったミスアバランチ、あーあ俺の人形が。ま、また造ればいいんだがな」
バラバラになったテクノがボロボロと人の形に整形されていく。そしてショットガンまで出来上がり、銃口が春日井へと向いた。それすら春日井は勘で避けてしまう。その流れ弾はミスアバランチの脇腹に、残りは理光の義手が弾いた。
そこで理光は思った。楽しい!と。
あの時は感じなかった。司令室でただ指示を出すだけのあの淡白な時間とは違う。死を身近に感じ、相手の生命がすぐそこにある!死神がすぐそこまで迫ってきている!生きるか死ぬかの瀬戸際。ここに立ってこそ生きている!
途端に理光は春日井の魔法によって機械でできた部分が全て粉々になった。
「クク、負けた。これで2度目の敗北だ。おかしいなこんな体になっても俺はお前ともっと戦ってたいとはなぁ」
「魔法・・・あの時私の血を飲んだから・・・」
魔法少女の血液に不思議な力がある。その力に適合、覚醒するのはだいぶ稀な事例であるが。
「見ろ、この自由自在に動く土塊を。人の感情さえも学習しちまう。そうすればさっきの奴らみたいに俺のためにだけ動く完全な魔法少女が出来上がる」
「その土人形が魔法を使えるってことはあなた契約書の在り処を知ってるのね。言って、どこに、誰が契約書を作っているの」
ゴゴ、と辺りが揺れ始めた。工場の屋根が崩れ、3メートルを超える陰達が理光を取り囲むように渦巻いていく。春日井はまずいと思い、聖奈を抱えていち早く工場から逃げ出そうとした。
「春日井つるぎぃ!また会おうぜ。今度は思惑通り踊ってやるよ」
激しい衝撃に建物が保たなくなり、春日井は近くの家の屋根まで跳んだ。不思議なことに、まだ夜だと言うのにあれだけいた陰が一体もいない。
「陰を吸い寄せていたのはやはりあの男の魔法。無意識に操っていた・・・覚醒しつつある、自分の力に」
春日井は魔力を回復に集中させて聖奈の傷を一つ一つ丁寧に治していった。
「まだ若い女の子だもの、傷跡一つ残してあげないわ」
―――
「――な!せな!おい聖奈!」
「おねえちゃん?」
気がつくとそこは家のベッド。
「折り紙がさ、ついてこいって言うからついて行ったらお前が屋根で寝てたんだよ」
折り紙が?喋る?
「どうやらまだ夢の中みたいだね、話の辻褄が合ってない」
「現実じゃあ!ところで昨日お前どこで何してたんだ。しんぱ・・・じゃなくて大変だったんだぞ」
聖奈は昨日のことを思い出そうとするがよく思い出せない。何か記憶にロックがかかってるような?本能が、細胞がこの記憶のロックを外すなと訴えている。なにか大切なこと?それとも忘れたほうがいい酷く悲しいこと?
「思い出せない、でもお姉ちゃんが無事ならそれでいい、安心した」
「お前な・・・」
「フフ、お姉ちゃんニヤけてる」
コイツー!
有里瞬です。
読んでいただきありがとうございます。ぜひ応援してください。




