第24話 四人の容疑者と今後の対応
倒壊した建物の瓦礫や魔物の死体を運搬している松原唯人を、離れた建物の屋上から眺める不気味な格好の男達。
今回のスタンピードを人為的に引き起こした張本人の一人が、徐に口を開く。
「Bランクハンターから何人か死者が出たくらいで、被害は極軽微。当初の目的であった戦力の大幅な損失は、全く果たせていない」
「ついでに、あのSランクハンターも戦死してくれれば、ラッキーくらいに思っていたが…アイツは化物だな」
「変異強化したエンプレス・アントは、間違いなくSランク魔物だ。それをいとも容易く討伐し、百匹近いソルジャー・アントも魔法で一発」
「任務失敗の原因は明らか。アイツの個体戦力を見誤ったためだ」
「だが、収穫もあった。前例にない昇級の早さと個体戦力の高さから、間違いなくユニークスキルを所持している」
「戦闘で直接使用する様子は見られなかったから、戦闘関連ではないのかもな」
「とりあえず、一度撤収するぞ。マスターに報告してから対策を立て、必ず次こそは…」
男達は一斉に建物の屋上から飛び降り、夜に姿を晦くらました。
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翌日。10時頃にギルド職員から連絡があり、俺はハンターギルド京都支部に訪れていた。
コンコンコン
「失礼します」
「おぉ、松原ハンター! お会いできてとても光栄です。そして昨夜の件、ご尽力感謝いたします」
ギルド長の執務室に入室すると、40代くらいの細身の男性が椅子から慌てて立ち上がり、俺に深く頭を下げる。
「頭を上げてください。ハンターとして、当たり前のことをしただけですから」
「ありがとう。さぁ、座ってくれ」
手で促されたのでソファに座り、職員が持ってきてくれたお茶で喉を潤す。俺が飲み終えたのを見て、ギルド長が口を開く。
「本当に感謝いたします。松原ハンターのご尽力のおかげで、被害は最小限で済みました。魔物のランクや規模を考えると、これは本当に奇跡です」
「あ、ありがとうございます。ですが、それよりも気になることがあります」
「人型の魔物ですよね」
「そうです。あのエンプレス・アントという魔物は、Sランクダンジョンのボス━━━ファイアー・ドラゴンと同等の強さでした。ダンジョン内の魔物が変異する事例は、ギルドの方で把握していましたか?」
「いえ、今回のことは初めての事例です。夜の時間帯ということもあって、ダンジョン内で活動するハンターも少なく、目撃者はいませんでした」
「そうですか」
「ですが、一つ気になることがあります。スタンピードが発生する直前、四人のハンターが入場していました」
「そのハンター達は、なんと言っているんですか?」
「それが…行方が分からないのです。携帯に連絡しても繋がらず、自宅も留守のようで」
「とても怪しいですが、何も手掛かりが無いんじゃ仕方ないですよね。話は変わりますが、ダンジョンの運営はどうするんですか?」
「一時的に調査のため、閉鎖する必要があります。そこでなんですが、松原さんも調査隊に入って頂けませんか?」
「また、エンプレス・アントが出現する可能性があるからですか?」
「その通りです」
「あまり拘束時間が長いと、困るのですが…」
「そこは、調査隊の皆さんに頑張ってもらうしかありません。拘束時間に応じた報酬は、きちんと支払いますので」
「…分かりました。調査は、明日からですか?」
「明日からです。既に協力してくれそうなハンターには、声をかけています。集合は、朝9時に現地集合です」
「了解です。お話は以上ですか?」
「最後に今回の報酬ですが、エンプレス・アントの死体は買取でいいですか?」
「はい」
「では、ソルジャー・アントとエンプレス・アントの買取で60億。松原ハンターの貢献度を考慮して6億。合わせて、66億になります」
ハハハ…えぐっ。
「ありがとうございます」
「こちらこそ、この度は本当にありがとうございました」
「では、失礼します」




