第19話 怪しい集団の悪行
「素材の買取をお願いしたいんですが…ソルジャー・アントを丸ごと収納しているので、取り出せる広い場所に案内して頂けますか?」
「し、承知しました!」
俺の言葉にとても驚いていた職員の後に続き、指示された場所に〈マジック・ポーチ〉から取り出したソルジャー・アントの死体を、一匹一匹並べていく。
「これで全部です。それと、これがクイーン・アントの素材と攻略報酬の胴鎧です。胴鎧は、鑑定を依頼します」
「…ハッ!? 承知しました! 少々、お待ちください!」
ソルジャー・アントの死体の数に驚いていた職員が我に帰り、慌ただしく他の職員に検分作業に取り掛かるよう、指示を出す。
俺は、先程のカウンター前で待つことにした。
「お、お待たせしました!」
「全然待ってないので、大丈夫ですよ」
「お気遣いありがとうございます! まず素材の買取額ですが、ソルジャー・アント20匹とクイーン・アント合わせて、4億2,000万になります!」
流石、高ランクで素材需要が高い魔物だ。たった一回の攻略で、数億稼げてしまった。
「続いてコチラの胴鎧ですが、名称を〈女王魔蟻の外殻鎧〉と言います。一つ目の効果は、物理攻撃や魔法攻撃を60%軽減し、強酸にも高い耐性があります。二つ目の効果は、頑丈値と精神値+60です」
「分かりました。ありがとうございました」
職員にお礼を言うと、目的もなく歩き始める。
「資金調達もできたことだし、Huntuber兼Aランクハンターの松本さんに、連絡してみるか。舞妓さんの良い店、知ってるかもしれないし」
その後、松本さんと無事連絡が繋がり、舞妓さんの店を紹介してもらうことになった。できるだけ長い時間楽しみたいので、今日は京都で一泊することを、母さんに連絡した。
「あ〜楽しみだなぁ」
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
唯人が松本さんと待ち合わせをして、舞妓さんの店に向かっている頃。
三日月のようなスリットがある白い仮面と真っ黒なローブを身に纏った集団が、巨大な巣穴が乱立するフィールドを駆けていた。
この特徴的な格好から分かる通り、彼等は都市伝説扱いされている〈死神〉に所属するハンターだ。
何故彼等が、ほとんど活動するハンターがいなくなった時間帯に、巣穴フィールドを駆けているのか。
それは、とある依頼主から〈死神〉に依頼が来て、それをクランマスターが受諾し、彼等に命令が下されたからだ。
彼等は躊躇うことなく巣穴に入り、通路を塞ぐソルジャー・アントをあっという間に討伐し、どんどん奥へ進んでいく。
約一時間前に唯人が攻略したボス部屋は、クイーン・アントと護衛のソルジャー・アントは復活していたが、白い巨大な卵は一つも無かった。
彼等は、見事な連携で護衛のソルジャー・アントを討伐し、クイーン・アントを瀕死まで追い込んだ。
しかし、彼等はクイーン・アントにトドメを刺さず、懐から十個の魔石を取り出す。それをクイーン・アントの前に置き、警戒されないよう距離を取る。
すると、どうだろう。
瀕死状態だったクイーン・アントは貪るように魔石を喰らい、ボロボロだった身体が元通りになり、徐々に変異し始めた。
フレイム・ワイバーンと同等だった巨体はみるみる小さくなり、それにより後ろ脚だけで直立が可能になり、残りの脚は人間の腕のように動かすことができるようになった。
変異は身体構造だけでなく、能力値やスキルレベルにまで及び、総合的な強さはファイアー・ドラゴンと同等━━━Sランクの領域に到達した。
完全変態を遂げたクイーン・アント、もといエンプレス・アントは、広大な空間が激しく揺れるほどの雄叫びを上げ、地上にいるソルジャー・アント達を招集する。
〈死神〉に所属するハンター達は、クイーン・アントが一つ魔石を食べたのを見届けると、即座に離脱していた。
「これで、任務完了だな」
「あぁ。できるだけ多く、BランクハンターやAランクハンターを殺してほしいところだ」
「それだけではなく、新たなSランクハンターも殺せれば、貰える報酬は多くなるだろう」
「あの変異蟻とSランクハンター、どちらが勝つか分からないからな。我々も様子を見て、トドメを刺せる隙を窺おう」
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