第14話 ギルド長は…畏怖した
〈猛進の拳鬼〉による唯人の両親拉致事件から数日が経ち、唯人が母さんと一緒に掃除や荷造りをしている頃、ハンターギルド内の廊下を職員が慌てて駆けていた。
コンコンコン
「し、失礼します!」
「ど、どうしたのだ! そんなに慌てて」
ギルド長は、自分の返事も待たず慌ただしく入室してきた職員に、大変驚いていた。そしてその様子を見て、それほど急を要する報告なのかと、身構えた。
「ギ、ギルド長! 〈猛進の拳鬼〉のクランマスターとそのメンバーが行方不明のようです!」
「な、なに!? ど、どういうことだ!」
「〈猛進の拳鬼〉で働いている職員から連絡がありました。ここ数日、誰一人クラン拠点に姿を見せず、行きつけの店にも顔を出していないようです」
「クランで遠征しているのではないか?」
「私もそう思いましたが、クランを管理している職員に何も告げないのは、おかしいです。それに、Aランクダンジョンがあるギルド支部にも確認しましたが、彼等は訪れていないようです」
「…どういうことだ? 国内のAランクやSランクダンジョンにいないのならば、一体何処に━━━まさか! 国外か!」
「落ち着いてください、ギルド長。Sランクハンターが国外で活動する際は、個体戦力やダンジョン資源などで、自国と相手国の承諾が必要です」
「そうだったな…」
「それと、もう一つ気になることがありまして…〈猛進の拳鬼〉のクラン拠点に、松原ハンターが訪れていたようなのです。そしてその後から、彼等が行方不明なのです」
「松原ハンターが? ふむ…クランへの勧誘とかだろうか? いや、ここで考えていても仕方がない。早急に松原ハンターに連絡を取り、何か知らないか聞きに行こう!」
「承知しました!」
ギルド長と報告にきた職員は急いで身支度を整え、松原ハンターの自宅に向かった。
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インターフォンを押すと私服姿の松原ハンターが出てきて、二階にある松原ハンターの自室に通された。
松原ハンターのお母様が運んできてくれたお茶で喉を潤し、現状について説明した上で、先日〈猛進の拳鬼〉を訪れた理由を尋ねた。
すると、松原ハンターから衝撃の発言が飛び出た。
「クランマスターの大毅と他のメンバーは、全員俺が殺しました」
その発言を聞いて私達は、暫く言葉を発することができなかった。そして、まだ現実として受け止めきれてなかったが、小さく言葉を紡ぐ。
「…な、何故でしょうか?」
当然の疑問として尋ねると、松原ハンターが少し声のトーンを下げて経緯を話し出し、話が終わった時、私達は頭を抱えるしかなかった。
確かにSランクハンターになる以前、何度か暴力沙汰を起こしたことがあった。しかし実力は確かで、ダンジョンの資源調達や攻略という面においては、多大な貢献があった。
そしてSランクに昇級したことで、彼が問題を起こした時にハンターギルドの特殊部隊で制圧できるか心配ではあったが、実際に彼が問題を起こすことはなかった。
そのように油断していた時に、今回の事件が起きてしまったわけだ。
「すまない。松原ハンターを疑うわけではないが、何か証拠はないだろうか?」
「闘技場内にあったカメラとパソコンは、回収しています。おそらく映像に両親の姿は映っていませんが、こちらを脅す発言の中に両親が人質になっていると分かる、発言があると思います」
「そうか」
「あとは、一階のロビーにある監視カメラを見れば、俺の両親が映っていると思います」
「分かった。こちらで確認次第、後日ご両親に謝罪させてほしい」
私達は深く頭を下げ、松原ハンターにお願いする。
「分かりました。その時、また連絡をください」
「あぁ」
私達はカメラとパソコンを受け取ると、松原ハンターの自宅を後にした。
私は深く息を吐くと、独り言を呟く。
「たった一人で、Sランクハンターを含むクランメンバーを皆殺しにするとは…」




