第7話 案内された場所は━━━
父さんと母さんを一刻も早く助けたい一心で、行き交う人達を常人離れした動体視力で避けながら、街中を駆けていく。
時々、「わっ!」「きゃっ!」と聞こえたが、そんなことを気にする余裕もなく走り続け、ものの数分で〈猛進の拳鬼〉のビルに到着した。
「ふぅ…」
乱れた呼吸を整え、自動ドアを潜る。すると、近くの椅子に座っていた男が俺の姿を見て立ち上がり、こちらに近づいてきた。
「予想していた時間より、かなり早い到着だな。俺は、これからお前をとある場所に案内する役なんだが…アイツらはどうした?」
「それより、早く父さんと母さんがいる場所に案内しろ。俺がここへ来たんだから、お前らの仲間がどうなっていようと、関係ないだろ」
「…まぁいい。ついてこい」
内心湧き上がる怒りを抑え、必死に冷静でいようと努めながら、男の後をついていく。エレベーターで地下に降り、扉が開くと廊下が伸びていた。
廊下の先にある重厚で頑丈な扉の前に立つと、自動的に扉が開け放たれる。扉の先は円形の闘技場があり、中央で大人数のハンターが待ち構えていた。
ここまで案内役を務めた男が俺とハンター集団の間に立ち、こちらに振り向く。
「さて、五人目のSランクハンターと持て囃されているお前に、俺達は一つ聞きたいことがある」
「俺も、お前達に聞きたいことがある。父さんと母さんは、どこにいる?」
「おいおい、コイツは自分の立場が分かってないようだ。お前の返答や態度次第で、両親の運命が変わるんだぞ? 身を弁えろ。クソガキ」
「…」
「では、話を続けよう。俺達が聞きたいことは、Sランクダンジョン単独攻略についてだ」
「…」
「Sランクダンジョンは、他のSランクハンターや最強のSランクハンターである大毅さんさえも、攻略できていなかった最高難度のダンジョン。それをポッと出のハンターが、しかもソロで攻略したと言われて、信じられると思うか?」
「お前達が信じられないと、勝手に思っているだけだろう。俺は、Sランクダンジョン攻略の証明としてボスの素材を提出し、ギルドは、それを鑑定した上で認めたんだ。お前達こそ、ギルドの発表が虚偽である証拠を持っているのか?」
「常識的にあり得ないと言っている。Sランクハンターでもなかったお前がSランクダンジョンを、しかもソロで攻略することなど不可能。何かしらの方法でギルド長を唆し、不当な手段でSランクハンターに昇級したんだろう」
「常識的にあり得ないと言ったが、それはお前達の主観だろう。しかも、何かしらの方法でギルド長を唆しって…勝手な憶測で虚偽と断定するのは、それこそ不当だ」
「はぁ…まだ理解していないようだな。お前の返答次第で、両親の運命が変わると言っただろう」
「…」
「さて、もう一度やり直すぞ。お前は何かしらの方法でギルド長を唆し、不当な手段でSランクハンターに昇級した。そうだな?」
「…」
「早く答えろ! テメェの両親をぶっ殺されてぇのか!」
「…分かった。だがその前に、父さんと母さんの無事な姿を見せてくれ」
「チッ、しょうがねぇなぁ。…お願いします」
すると、ハンター集団の後方にある特等席の内部が見えるようになった。先程までマジックミラーだったはずだが、何かしらの方法で変化したようだ。
内部には、椅子に座る男と左右に控える二人の男女、拘束されて床に転がる俺の両親がいる。
声をかけようとしたが、一瞬で元に戻され、男が再び口を開く。
「お前の望みは叶えた。次はこちらの番━━━はい。はい、了解しました」
話し始めたと思ったら、男が急に誰かと話し始めた。
「お前から言質を取る前に、その生意気な態度を改めさせてやろう。俺らが先輩として、優しく教育してやるよ」
「…」
「勿論、防御したり反撃したりすれば、両親の命はねぇからな。それじゃ、装備をその場に置いて、少し下がれ」
言われた通り〈光学迷彩のローブ〉を脱ぎ、〈ハイオーガのガントレット〉〈ハイオーガのグリーブ〉を外す。
そして、〈百足王の死毒短剣〉〈バルムンク〉〈マジック・ポーチ〉をその場に置き、少し離れる。
男がそれらの装備を回収すると、ハンター集団の方へ向かい━━━
「お前ら! 思う存分教育してやれ!」
その言葉を聞いて、数名のハンターが駆け出した。
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