第2話 視認できない回避行動
五人目のSランクハンターが誕生したことについて、テレビやネットで全国に拡散され、多くの国民が注目する中、俺はまだ訪れていないダンジョンに向かっていた。
目的の場所に到着しタクシーから降りると、一人二人と俺に気づく人が増え、周囲がザワザワし始めた。
しかし、安易に俺に近づく者はいなかった。特に近づき難い雰囲気は纏っていないが、強大な魔物を討伐できるSランクハンターなだけあって、少し畏怖も抱いているようだ。
俺が歩き始めると、前方にいるハンター達が自然と避け始め、すんなりと入場手続きをすることができた。
ただ、少しだけ申し訳ない気持ちになった…。
ダンジョンに入場すると、多種多様な花が咲き誇っていた。周囲の見晴らしも良く、ハンター達がどんな魔物と戦っているのか、一目瞭然だった。
頭部と胴部を含めた全長は1メートルほどあり、翅を広げた時の横幅は2メートルもある、大きな蛾の魔物。
その大きさと特徴的な模様を見ると、本能的に嫌悪感を抱いてしまう。
ここはBランクダンジョンなので、大きな蛾━━━ミアズマ・モスは全く脅威にならない。それに、所持スキルも既知のモノばかり。
いやまぁ、俺からしたら雑魚ってだけで、ランクはトロールと同等だから、中級ハンターでないと、討伐は難しいけど。
呑気に花の蜜を吸っている個体に近づくと、大きく翅を羽ばたかせ、飛翔する。少し見上げる程度の高さまで飛翔すると、そのまま滞空し、翅を羽ばたかせ続ける。
そして翅を羽ばたかせる度に、キラキラと輝く極小の鱗粉が舞い、鼻がムズムズする。
(【猛毒耐性】を所持しているから、この鱗粉には毒性がありそうだな)
ただ、高い精神値と【猛毒耐性】を所持しているせいか、全く毒状態にならず、ミアズマ・モスも同じ動作を繰り返すだけ。
特に変わった攻撃手段も無いようなので、知覚速度を超えた動きで、斬り伏せた。
『魔力が7UPしました』
『筋力が7UPしました』
『頑丈が8UPしました』
『敏捷が8UPしました』
『知力が7UPしました』
『精神が7UPしました』
『器用が7UPしました』
『幸運が9UPしました』
「全然歯応えのない魔物だけど、小遣い稼ぎにはちょうどいいからな。ボス部屋に続く入口を見つけるまでは、ある程度討伐しておくか」
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
あれから接敵したミアズマ・モスを討伐していき、無事に入口を見つけることができた。
ここまで特に体力を消耗することはなかったので、休憩を挟むことなく、ボス部屋の扉に手をかけた。
ボス部屋の真ん中辺りまで進むと、頭上から光球が降ってきて、さらに眩しく輝き出す。
目の前に現れた魔物は、全体的な大きさはミアズマ・モスと同じくらいだが、翅に模様のない真っ白な蝶だった。
すぐに【看破】でステータスを視ると、とても目が惹かれるスキルを所持していた。
(名称から想像はつくが、実際にどんな感じなのか、この目で確かめたい!)
俺は真っ白な蝶━━━プシュケーのステータスから現実に意識を戻し、〈バルムンク〉を手にする。
するとプシュケーは、ミアズマ・モスと同様に鱗粉を撒き散らす。所持しているスキルから、この鱗粉には睡眠効果があるようだ。
【睡眠耐性】は所持していないが、これだけ精神値が高ければ、すぐに寝落ちすることはないと思い、素早く距離を詰める。
長剣を振り下ろした時、そこにはプシュケーの姿は無く、後方に気配を感じた。振り向くと、傷ひとつないプシュケーが翅を羽ばたかせ、先程と同様に鱗粉を撒き散らしていた。
直前まで回避行動が見えず、気づいたら後方にいた。俺の知覚速度を超えて移動したというよりは、突然その場から消失したような感じ。
「ハハハ!」
その後、確かめるように何度も同じような攻撃を仕掛け、その度に突然消えたかのように回避された。
最後に【隠密】で姿を消し、【息吹】で瞬発力を強化して、一瞬で距離を詰める。プシュケーの意識を置き去りにする速さで、真っ二つに斬り伏せた。
『魔力が11UPしました』
『筋力が11UPしました』
『頑丈が11UPしました』
『敏捷が14UPしました』
『知力が11UPしました』
『精神が12UPしました』
『器用が11UPしました』
『幸運が14UPしました』
『【睡眠耐性】Lv.5を獲得しました』
『【短距離転移】Lv.5を獲得しました』




