第74話 再鑑定と特別な待遇
翌日、朝早くからハンターギルドを訪れていた。昨夜、ギルドの職員から連絡があり、緊急の用事が無ければ必ずハンターギルドに寄ってほしい、と言われた。
「おはようございます。ギルド長」
「おはよう。急な呼び出しに応じてくれて、本当にありがとう」
「いえ、特に用事は無かったので」
ギルド長の執務室で応接用のソファに座り、お互いに挨拶を交わす。
「では、早速本題に入ろう。Sランクダンジョン攻略の証明として見せた、ファイアー・ドラゴンの素材を見せてほしい」
「分かりました」
マジック・ポーチから順番に取り出し、テーブルに並べていく。並び終えると、大きく真っ赤な魔石を手に取り、ギルド長が口を開く。
「Aランク魔石よりも、二回りは大きいな。そして、この赤色の輝きがとても美しい」
ギルド長は順番に素材を手に取り、矯めつ眇めつ眺める。一通り見て終えると、側に控えていた男性に指示を出す。
「鑑定を頼む」
「承知しました」
ギルド長同様に素材を手に取り、順番に鑑定をしていく。
「全ての鑑定が終わりました。ここで一番重要となる等級は、神話級です」
ん? 等級?
「あの、等級というのは? 出張所の鑑定結果では、一度も聞いたことがないのですが…」
「それについては、私から話そう。結論から言うと、【鑑定】のレベルの違いだ」
「なるほど、スキルレベルの違いですか。ということは、この方は元ハンターなのですか?」
「いや、彼はハンターだったわけではない。所謂パワーレベリングというやつだ。現役のハンターに手伝ってもらい、スキルポイントを消費して【鑑定】のレベルを上げたのだ」
「そうだったんですね」
「ハンターの中で、【鑑定】のレベルを重点的に上げる者はいない。苦労して入手した装備やアイテムの効果が分からないと、ハンターが困ると思って、ハンターギルドで【鑑定士】を育成することにしたのだ」
確かに【看破】や【隠蔽】に比べたら、優先度は低いだろう。その他にも[魔法系統]や[戦闘系統]のレベルも上げないといけないので、高レベルの【鑑定】を所持する者はいないだろうな。
「彼等はそこそこレベルはあるが、実戦経験や技量は皆無で、スキルも【鑑定】以外所持していないので、いざという時の戦力にはならない」
「教えて頂き、ありがとうございます」
「特に秘匿しているわけではないから、構わないさ。さて話を戻すが、これらの素材が神話級と判明したわけだ。これにより、松原ハンターをSランクに昇級する」
マジか! たった一回攻略しただけで、Sランクハンターになるとは…いや、めっちゃ嬉しいけど!
「話が終わったら、下で手続きを忘れないようにな」
「分かりました」
「それで、素材の買取額についてだが…昨日協議した結果、素材一つにつき10億で買い取らせてほしい。ここに並べられている数は12個なので、120億だ」
昨日、約50億ほど稼いだばかりなのに、さらに120億も手に入るなんて…これこそ、ハンタードリームだよな!
「これらの素材は、現状松原ハンターしか調達できないため、超高額の買取になっている。そのため、他のSランクハンター達によって調達可能となれば、少し金額は下がる可能性がある。それだけは、覚えておいてくれ」
「分かりました。全て売却します」
「分かった。次に、松原ハンターの特別待遇についてだ」
「特別待遇、ですか?」
「あぁ。単独でSランクダンジョンを攻略した松原ハンターを、他国は色々な手を使って勧誘してくるだろう。しかもクランに所属していないと、尚更だ」
スタンピードの一件だけでも、大手クランから勧誘が何度もあったんだ。Sランクダンジョン単独攻略となれば、他国からの勧誘もあり得そうだな。
「松原ハンターは、我が国の貴重なハンターだ。そのため、この国にできるだけ留まってもらうために、特別な待遇を用意した」
そして、一枚の紙を差し出す。
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〈特別待遇一覧〉
・税金
・生活費(家賃、光熱費、水道代、食費)
・物品費(生活必需品、携帯代、自動車)
・医療費、保険
・素材買取額×1.1倍
上記の費用は、ハンターギルドが全額負担。
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「本当に、これだけの待遇が受けられるのですか?」
「勿論だ。松原ハンターは我が国に不可欠な存在だ。他国への流出を防ぐならば、これくらいは当然だ」
元々他国に移住する予定はなかったけど、これだけの待遇が受けられるなら、提案を飲んでもいいな。
「分かりました。この契約を承諾します」
「ありがとう。この契約書は二枚あるので、押印が済んだらハンターギルドまで郵送してくれ」
「はい」
「最後に、松原ハンターの昇級をマスメディアを呼んで大々的に発表する。その際、迎えを寄越すから会場に来てもらいたいんだが」
うーん…大勢の前に出るのは恥ずかしいし、次のダンジョンについて考えたいから、出席は無理かなぁ。
「すみませんが、お断りします」
「そうか…では、顔写真で対応するか。長々とすまなかったな。話は以上だ」
「では、失礼します」




