第73話 驚くべき緊急報告
Sランクダンジョン前の出張所から連絡を受けた職員が、ハンターギルド内の廊下を慌ただしく駆けていた。
そして目的の場所に辿り着くと、一度大きく深呼吸をして息を整え、扉を三回ノックする。
コンコンコン
「ギルド長。緊急のご報告があり、参りました」
「入れ」
「失礼します」
許可を得て入室すると、職員は執務机の手前で立ち止まり、姿勢を正す。
「それで、緊急の報告とは?」
「はい。先程Sランクダンジョンの出張所から連絡があり、松原唯人ハンターがSランクダンジョンを攻略したと報告がありました」
「な、なんだと!?」
思いがけない報告を聞き、ギルド長━━━小川忠明は、勢いよく立ち上がる。しかしすぐに冷静になり、根拠を問い質す。
「攻略したと━━━そのように判断した根拠は、何だ?」
「松原ハンターが取り出した、素材を見て判断したそうです。素材は魔石、牙、皮、骨、血なのですが、全てファイアー・ドラゴンという未確認の魔物のモノだったそうです」
「…なるほど。確か外国のSランクダンジョンでは、異なる属性のワイバーンが出現する場所があったな。そこのダンジョンボスは、ワイバーンと同属性のドラゴンだった」
「ファイアー・ドラゴンはその名称から、フレイム・ワイバーンと同属性であることは、間違いありません」
「そうだな」
「それと、攻略報酬で入手したと思われる長剣を鑑定したそうなんですが、竜種特効と不壊特性という、珍しい効果があったようです」
「不壊特性というのは、武器が損傷しないということか?」
「その通りです」
「ハンターにとっては、夢の武器だな。さて、鑑定した職員を疑うわけではないが、重要事項のため、再度こちらで鑑定を行おう。現物は、出張所にあるのか?」
「いえ、松原ハンターが所持しています」
「では明日、松原ハンターにはハンターギルドに寄ってもらうとしよう。それと、緊急で協議しなくてはならないな。事実確認が取れた場合、早急に買い取りたいからな」
「昇級については、どうされますか? 事実であった場合、松原ハンターは単独でSランクダンジョンを攻略したことになります」
「なんだと!? 松原ハンターは、単独でSランクダンジョンに挑戦したのか!?」
「はい」
「前例のない早さで昇級し続け、Aランクダンジョンも単独で攻略し続けていたようだが…まさかSランクダンジョンまでも、単独で挑戦するとは」
「未だSランクハンターが率いるクランでさえ、攻略できていないのです。それなのに、松原ハンターがSランクハンターでないのは、おかしいかと」
「そうだな。事実であった場合は、早急にSランクに昇級させよう。そしてそうなれば、国内のSランクハンターが一人増え、Sランクダンジョン攻略国に、日本も名を連ねることができる」
「それに私は、単独でSランクダンジョンを攻略したハンターを知りません。国外に向けて発信すれば、侵攻の抑止力になります」
「そんな強力なハンターがいるなら、安易に侵攻しようとする国は減るだろう。昨今の国際情勢では、資源獲得と魔物から国民を守るハンターが、紛争や戦争に駆り出されるのは珍しくないからな」
「あとは、他国からの勧誘ですね。松原ハンターはクランに所属していませんし、間違いなく接触はあるでしょう」
「なんとしても松原ハンターには、この国に留まってもらいたい。そのためには、何か特別な待遇を用意するべきか」
「そうですね。それも、協議が必要になります」
「よし。私は、協議の準備を進めておく」
「私はこの後、松原ハンターに連絡しておきます」
「頼んだ」
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