第69話 炎を司る天空の覇者
断続的に襲いかかってくるフレイム・ワイバーンを討伐し、やっとの思いで火山の麓に、ボス部屋へと続く小さな入口を発見した。
等間隔て並ぶ松明の灯りを頼りに、長い長い廊下を歩いていく。こちらを威圧するように佇む巨大な扉を前に、俺は少し休憩を摂ることにした。
ここに来る道中でコンビニに寄り、ツナマヨのおにぎり三個と緑茶一本を購入していた。
ゆっくりと時間をかけて食べ、身体も休めつつ、次の戦闘に備えて戦意を高めていった。
「よし、行くか!」
尻の土埃を払いながら立ち上がり、改めて巨大な扉を見据える。
国内では、大手クランが大人数で攻略に挑むも、未だ攻略できていない最高難易度のダンジョン。
ソロで攻略する者は、頭のおかしい馬鹿だ。
しかし、俺は今ボス部屋の前にいる。
今から始まる戦闘を勝ち抜けば、誰一人成し遂げられなかったこと━━━偉業を成し遂げることになる。
それは、これまでの時代に終止符を打ち、新たな時代の始まり。
俺は興奮冷めやらぬ気持ちで、巨大な扉に手をかけた。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
広大な空間はここまでと同じフィールドだが、火山が活発になっている。そして、十個の光球と一回り大きい光球が頭上から降り注ぎ、眩しく輝き出す。
目の前に出現した魔物は、十匹のフレイム・ワイバーンと…。
真っ赤に輝く竜鱗に覆われた身体は、フレイム・ワイバーンの二倍━━━全長100メートルほどあり、強靭でしなやかな後ろ足で支えられている。
前腕には真っ白な鋭い竜爪があり、高ランクハンターの高価の防具であっても、容易に斬り裂き致命傷を与えるだろう。
大きな口の間からは鋭い歯が見えており、呼吸に合わせて火の粉が舞っている。そして、真っ黒な縦長の瞳孔で俺を見据えている。
名称は、ファイアー・ドラゴン。フレイム・ワイバーンのような亜種ではなく、正統な竜種。
「ハハハ…流石、Sランクダンジョンだな」
フレイム・ワイバーン一匹でさえ、Aランク上位のパーティーが苦戦するほどなのに、このドラゴンはフレイム・ワイバーンよりレベルが10も高く、所持スキルも軒並みレベル9。
まさに、食物連鎖の頂点。
…だが俺だって、ここへ辿り着く前にさらに強くなった。簡単に負けるつもりはないし、なんなら━━━
「俺がお前を喰らってやる!」
そう意気込むと、俺の戦意を感じ取ったのかドラゴンも臨戦態勢に入る。大きな翼を羽ばたかせ、上空に飛翔すると大きく口を開ける。
短剣を抜き、油断なくドラゴンの動きを注視していると、周囲の大気が震え、バリバリッと轟音が鳴り響く。
まるで、某海賊漫画の覇気のような…
「グァアアアアア!」
ドラゴンが咆哮すると、耳を劈くような音と激しい大気の揺れが俺を襲う。
吹き飛ばされないように踏ん張っていた時、ふと自分の手を見てみると、小刻みに震えていた。
(これが、天空の覇者の覇気…)
常人よりも能力値は高いはずだが、それでも震えを感じるレベルか。まぁでも、戦意が挫けないだけまだマシ。
いや寧ろ、さらに戦意を高めつつ、俺は強く駆け出した。
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