第62話 昇級
翌日。いつも通り早朝に起床し、朝食を食べながら携帯を弄っていた。というのも、昨日で都内にあるAランクダンジョンは全て攻略したので、次をどうするか悩んでいた。
他のAランクダンジョンを目指すなら、県を跨ぐ必要がある。新たなスキルを獲得したいなら、都内にまだ攻略していないダンジョンがある。
さて、どうするかと悩んでいると━━━
プルルル、プルルル、プルルル
携帯の着信音が鳴り、相手の名前を確認して、通話ボタンを押した。
「もしもし」
「おはようございます。ハンターギルドの清水です。松原様のハンターランクが、BランクからAランクに昇級することになりました。おめでとうございます!」
ナイスタイミング! まぁ、もうそろそろかなと思っていたけど。
「ありがとうございます。Aランクに昇級ということは、Sランクダンジョンに挑戦できる、ということですよね?」
「そうなります。つきましては、ハンター証の更新手続きのため、一度ハンターギルドに寄って頂けますか?」
「今すぐ行きます!」
「お待ちしております」
通話を終えると、急いで朝食を食べ身支度を整えると、足早に玄関に向かった。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「手続きが終了しました。これで松原様はAランクハンターとなり、最難関のSランクダンジョンに挑戦することができます」
「はい! では、これで失━━━」
「松原様、お待ちください!」
逸る気持ちが抑えられず、足早に立ち去ろうとしたが、慌てながら呼び止められてしまった。
「…何でしょうか?」
「失礼ですが、これまでと同じように単独で挑戦するおつもりですか?」
「はい。ソロで挑戦してみて、難しいようなら攻略方法を考え直したいと思います」
「…松原様は、Sランクハンターがマスターのクランに所属する予定は、ありますか?」
「ちょうど検討中です」
「でしたら、Sランクダンジョンの攻略は、クランに所属してからでも遅くないかと。いえ本音を言うと…ハンターギルドとしては、クランに所属してから挑戦して頂きたいと思っております」
「…」
「松原様の実力は、ハンターギルドも十分承知しています。これまで全てのダンジョンをソロで攻略し、単独でスタンピードを終息させ、国内では例が無いほどの早さで昇級しています」
「…」
「未来のSランク候補━━━いえ、現時点でSランクハンターに並ぶ松原様を失うことは、国家の損失です。皆、新たなSランクハンターの誕生を望んでいます」
「…」
「一度、落ち着いて考えて頂けませんか?」
正直、迷惑な話だと思った。言っていることは理解できるのだが、それはあくまでそちらの都合。
俺は早くSランクダンジョンに挑戦し、たくさんお金を稼ぎ、さらに強くなりたい。自らの命を懸けてやっていることなのに、誰かの都合に左右されたくない。
それに、先程からリスクのことばかり気にしているが、俺がこのままSランクダンジョンを攻略した場合、新たなSランクハンターの誕生だけでなく、Sランクダンジョン攻略国に、日本が名前を連ねることになる。
ハイリスク・ハイリターン。リスクばかり恐れていては、リターンも望めない。
だから━━━
「申し訳ありませんが、考えは変わりません」




