第57話 社宅と淡い期待
彼女の色香に惑わされないよう、小さく深呼吸をして、気持ちを切り替える。そして、隣の彼女に向き直り━━━
「すみません。一つ、聞きたいことがあるのですが」
「何でしょうか?」
「両親の安全を確保したいのです。クランに所属すれば、社宅は無料で住めると聞きましたが、セキュリティ面はどうなのでしょうか?」
「ということは、クランへの所属も検討して頂けると、そういうことですか?」
「はい」
「…分かりました。では、ご説明させて頂きます」
彼女の説明によると、基本的に家族以外の部外者は立ち入り禁止。例外的に立ち入りを許可する場合も、入念に身元を確認される。
社宅の外壁や窓ガラスは、Aランクの魔石で強度を高めた材料を使用しており、Bランク以下の魔物やハンターの襲撃を受けても、びくともしない。
監視カメラやオートロックも備わっており、Sランク魔物やハンター、強力なユニークスキルを所持している者でなければ、侵入も破壊も不可能。
中には、ダンジョンから入手した強力なアイテムで、社宅を守っているクランもあるらしい。
そして有事の際は、社宅に住むハンターがそのまま防衛戦力となるため、家族が心配なハンターは、ほとんどが社宅を利用するようだ。
「説明は以上です。何かご不明な点は、ありますか?」
「そうですね…」
社宅に住むメリットは理解した。この際一番優先するのは、両親の身の安全だ。
(後は、どこのクランに所属するかだが…)
「もう一度確認しますが、ダンジョンの報酬で武器類は、俺の取り分でいいんですよね?」
「えぇ。私のクランに所属して頂けるのであれば」
「分かりました。一度、両親と相談してみます」
「良い返事を、お待ちしております」
〈全癒の戦乙女〉の高層ビルを後にして、江戸川区にあるAランクダンジョンを目指す。
「うーん…〈剣王〉と〈猛進の拳鬼〉にも行ってみて、社宅について聞いてみようかなぁ」
〈剣王〉の勧誘は一度断ったし、〈猛進の拳鬼〉からは勧誘を受けてないけど、社宅については聞いてみたい。
それだけなら、わざわざクランマスターに会う必要もないからな。
「あぁでも、どちらも社宅を利用するなら、まず入団試験を受ける必要があるか」
色々考えた結果、〈全癒の戦乙女〉に所属するのが、一番楽だと思い始めた。
「穂乃果さんも綺麗だし、女性ハンターが多いってことは、初めての彼女ができる可能性も…」
そんな淡い期待を抱いていると、目的のAランクダンジョンに到着した。
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