第41話 昇級と報酬の使い道
「手続きが終了しました。これで松原様はBランクハンターですので、Aランクのダンジョンに挑戦することができます。しかし、その…」
何故か、言い淀む職員。Dランクに昇級した時、Cランクのダンジョンからは難易度が上がると忠告されたが…その時でさえ、口を噤むことはなかった。
「どうかしましたか?」
「…失礼いたしました。昨日のスタンピードの件で、松原様の実力は承知しています。ですが、これまでの活動状況を見るに、Aランクダンジョンにもソロで挑戦するのだろうと、そう思いまして…」
「そういうことですか。できれば、パーティーを組んで挑戦してほしいってことですね?」
「はい。Aランクダンジョンは、ハンターのランク分けと同じく、上級ダンジョンに分類されます。出現する魔物の質が高くなり、個体数も増加します」
「確か…Bランクダンジョンのボスはレベル40で、Aランクダンジョンのボスは、レベル60でしたよね?」
「そうです。それに普通の魔物でさえ、Bランクダンジョンのボスより強いのです。ですので、ソロで挑戦することは控えて頂きたいのです」
ハンターギルドとしては、高価な資源を持ち帰り、単独でスタンピードを終息させられるハンターを、安易に失いたくないだろう。
だから、この職員の意見はとても正しいのだが━━━
「心配してくださって、ありがとうございます。一度ソロで挑戦してから、考えたいと思います」
「…そうですか」
「では、失礼しま━━━」
「あ、お待ちください! まだ、ご用件がありまして」
職員に呼び止められ、用件を尋ねようとすると、肩を叩かれた。振り返ると、さっき困っている時に助けてくれた、ギルド長だった。
「松原君、少し時間をもらえないか?」
あの時は面会を断ったが、今は周囲の目があるしな…
「少しなら」
「ありがとう。ついてきてくれ」
ギルド長の後に続き、執務室に案内される。応接用のソファに促され、先程ギルド長に頼まれた職員が、お茶を運んでくる。
「さぁ、飲んでくれ」
「いただきます」
一口飲んで喉を潤すと、湯呑みを置いたタイミングで、ギルド長が口を開いた。
「まずは昨日の件、感謝を伝えたい。君のおかげで、多くの住民とハンターの命が救われた。本当にありがとう」
そう言うと、深々と頭を下げる。
「いえ、ハンターとして当然のことをしたまでです。それに、私一人の力だけではありません。他のハンターが、命懸けで守ってくれたおかげです」
「若いのに、しっかりした青年だ。謙虚な姿勢も、好ましい」
「ありがとうございます」
「さて、一番伝えたかったことは言えた。最後に、スタンピード終息の功績に対して、三億円を支払おう。勿論、トロールの素材買取とは、別でだ」
三億! とんでもない大金が貰えるのは、素直に嬉しい! 父さんと母さんに旅行をプレゼントできるし、高価な装備やアイテムも買える!
ふと、あの親子のことを思い出した。
生活区域を蹂躙され、帰る場所も無い。毎日お風呂に入れないし、暖かい布団で寝るとこもできない。
お金も無いから、食事にも困るだろう。
「その三億円は、被災者の支援や被災地の復興に使ってください」
「…本当にいいのか?」
「はい」
お金はこれからAランクダンジョンで十分稼げるし、特に生活に困ってないからな。
「分かった。大切に使わせていただく。しかし何も無いというのは、ギルドの面子に関わる。何か望みはないか?」
「それでは、何か困ったことやお願いがあれば、その時に力を貸してください」
「よし、分かった。あまり無茶な要求は聞けないが、それ以外であれば必ず力になる。ギルド長として、約束しよう」
「ありがとうございます」
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