第9話 相手の得意な戦法で勝負
目の前に放り投げられた魔石を見てオールマイティ・スノウマンは、俺と対峙していることを忘れて、一心不乱に魔石を貪る。
俺はその様子を大人しく眺め、十個の魔石を全て食べ終えたオールマイティ・スノウマンは、徐々にその存在を変化させていく。
3メートルほどあった身長はさらに縮み、筋骨隆々だった肉体は、鍛え抜かれた細身の肉体に変化した。
身長は縮んだとはいえ、まだ2メートルほどあるが、エンプレス・アント以上に限りなく人型に近くなった。
当然能力値やスキルレベルも上昇し、ファイアー・ドラゴンと同等━━━Sランク魔物に変異強化している。
二回目の検証も成功となると、魔石を喰わせる方法は、確実にボスを変異強化させるようだ。
ただしこの方法は、取り扱いに非常に注意が必要だ。Sランク魔物を討伐できる実力があれば問題ないのだが、討伐に失敗した時はそのハンターだけでなく、スタンピードの誘発により、街と市民に大きな被害が出る。
まぁこんな邪道な方法より、普通にSランクダンジョンに挑戦する方が、堅実だと思う。
数瞬思考している間も、俺と変異強化した魔物━━━オールマイティ・スノウキングは、相手を値踏みするように鋭く睨み合っていた。
しかしその膠着状態は、突然終わりを告げる。
オールマイティ・スノウキングが【覇気】を発動し、大気が軋むほどの圧倒的な圧力が俺の身体を襲う。
それに対抗するように俺も【覇気】を発動し、オールマイティ・スノウキングの【覇気】を相殺する。
怯む素振りを見せない俺を見てオールマイティ・スノウキングは、突然真横に氷壁を生成し、拳で砕いた。
本来、相手の攻撃を防御するために生成する氷壁を自分で砕くという突飛な行動に呆気に取られていると、オールマイティ・スノウキングは徐に氷塊を拾い上げ、大きく振りかぶる。
そこでようやく意図を理解した俺は、風切音とともに高速で迫る氷塊を、〈バルムンク〉を振り抜き破壊した。
続けて、何度か氷塊を【投擲】したオールマイティ・スノウキングは、この攻撃は無意味だと理解し、次の行動に移る。
オールマイティ・スノウキングは、手元に巨大な氷槍を生成し、大きく振りかぶって【投擲】した。
非常に頑丈な氷槍も、〈バルムンク〉の前では容易く両断された。しかし、オールマイティ・スノウキングの本命の攻撃は、この後だったようで。
〈バルムンク〉を振り抜いた直後の硬直状態を狙い、距離を詰めていたオールマイティ・スノウキングは、俺の顔面目掛けて鋭く拳を振り抜いた。
しかし、オールマイティ・スノウキングの拳は空を切り、俺は【短距離転移】で距離を取っていた。
これには魔物であるオールマイティ・スノウキングも、驚愕の表情を浮かべていた。
「狙いは、悪くなかったけどな。さて、最近【隠密】による奇襲戦法に頼りすぎているから、これからは相手の得意な戦法で勝負して、応用力と地力を上げよう」
勿論、スタンピードなどの緊急時はこの限りではない。
〈バルムンク〉を〈マジック・ポーチ〉に収納し、手首や足首を回してその場で軽くジャンプする。
「いくぞ!」
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
オールマイティ・スノウキングが優れているのは、【氷魔法】と【体術】。なので俺も、【氷魔法】と【体術】に限定して戦うことにした。
まずは、近接格闘。お互いに肉迫し、拳と蹴りを打ち合う。
オールマイティ・スノウキングが繰り出した右ストレートに、俺も右ストレートを繰り出す。
能力値に差があり押し負けたオールマイティ・スノウキングは、突き合わせていた拳を開いて俺の拳を掴み、さらに左手でも掴み左足を後ろに引いて、俺の左脇腹に膝蹴り打ち込もうとする。
咄嗟に右足を上げて膝蹴り防御したが、そちらに気が取られている内に、俺の拳を掴んでいた左手を大きく振り上げ、薙ぎ払うように俺の右側頭部を狙う。
俺は薙ぎ払いを屈んで躱し、そのまま後転するように、オールマイティ・スノウキングを後方へ吹き飛ばす。
一度距離が開いた俺とオールマイティ・スノウキングは、再度距離を詰めて肉迫する。
オールマイティ・スノウキングの方がスキルレベルは高いが、俺の方が能力値は高い。そうなるとダメージが蓄積するのは、オールマイティ・スノウキングの方だ。
両者の実力が拮抗した状態であれば、技量が高いオールマイティ・スノウキングに軍配が上がるかもしれないが、能力値に差があると話は変わる。
オールマイティ・スノウキングが繰り出す拳や蹴りは、俺に少しの痛みを与える。しかし俺の繰り出す拳や蹴りは、オールマイティ・スノウキングに無視できない痛みを与える。
近接格闘では勝てないと判断したオールマイティ・スノウキングは、強引に距離を取ると、【氷魔法】を行使する。
突然俺を囲むように氷壁が生成されると、左右の氷壁に付いていた氷の扉が閉まり、俺は氷の棺桶に閉じ込められた。
しかし、高い精神値と【氷魔法耐性】で強引に脱出を図り、お返しに【氷魔法】の広範囲殲滅魔法を行使する。
「アブソリュート・ゼロ」
魔法を行使すると同時にフィールド内は、俺の知力値によって万物が凍てつく絶対零度状態になり、オールマイティ・スノウキングも全身を氷の結晶によって輝きを放ちながら、時間が停止したように硬直していた。
そして俺は、ゆっくりと氷の楽園を歩きオールマイティ・スノウキングに近づくと、無慈悲に回し蹴りで氷像を砕いた。
『Lv.82にUPしました』
『魔力が46UPしました』
『筋力が46UPしました』
『頑丈が69UPしました』
『敏捷が42UPしました』
『知力が42UPしました』
『精神が74UPしました』
『器用が42UPしました』
『幸運が46UPしました』
『【氷魔法】Lv.8にUPしました』
『【体術】Lv.9にUPしました』
『【打撃強化】Lv.9にUPしました』
『【氷魔法強化】Lv.8にUPしました』
『【極寒耐性】Lv.8にUPしました』
『【投擲】Lv.8にUPしました』
『【雪上滑走】Lv.8にUPしました』
ブックマーク登録とリアクションで、作者を応援してください!
感想やレビューもお待ちしております!




