長谷川冷夏と西風舘温夏は朝の時間を過ごす
ライブに誘ってもらった翌日からの視線を感じるようになった。こんな風に言うと長谷川さんに誘われたことが関係しているとは思われるかもしれないけど、別にそんなことはないと思う。只の偶然のはず。
でも、もしかしたら長谷川さんと話しているところを誰かに見られて…という可能性はゼロではないかも。いや、彼女はとても人気なので二人きりで話しているところを見られて、嫉妬の視線に晒されている可能性はあるかもしれない。
そんなことを考えながら、今日は日直であるために早めに登校した。面倒くさいと思ってしまうけど、日直が回ってきてしまった以上は仕方ない。
下駄箱に靴をしまって上履きを取り出していると後ろから誰かに話し掛けられた。
「あ、あの……」
「あ、長谷川さん、おはようございます」
「…お、おはよう…き「ごめんなさい、今日は急いでいるのでお先に行かせてもらいます」」
何か話そうとしていた、長谷川さんには申し訳ないですが今日は日直で先生の手伝いを朝からしなくちゃいけない。遅れると後で何を言われるか分かったもんじゃないからね。
先生の手伝いをするために職員室に向かって必要なものを教室へと運ぶ。その途中の廊下で話声が聞こえて来る。
「ねぇ、聞いた?」
「うん。軽音楽部が来週の金曜日にライブをやるってね。今からめっちゃ楽しみだよね!!長谷川さんの歌声を聞けるなんて!」
「私も!!でも、人気だからね。体育館に入りきるかな。でも、長谷川さんの歌声を生で絶対に聞くんだ!」
多分、僕と同じで日直などの用で朝早く来なくちゃいけない人か、元々早く登校する人なのか分からないけど、こういう話を聞くと本当に長谷川さんの人気はすごいのだと改めて痛感させられる。
多くの人が長谷川さんたち軽音楽部のライブを楽しみにしている。
「…やっぱり楽しみですね」
教室に着くとそこには…朝が早いこともあってまだほとんどの生徒は登校してきていない。その中でも長谷川さんだけが自分の席に座っていた。
「長谷川さんは早いんですね」
「き、きょうはね…。ちょっと用事があって…」
「そうなんですか…」
「そ、それで…一つ聞いてもいいかな?」
「僕にですか?」
「うん…」
「いいですよ。僕に答えられる範囲のことであれば」
「…ライブに来てくれるのは…ほ、ほんとうに信じていい?」
「はい。滅多にない機会ですし」
この機会を逃したら次は聞けないかもしれないですし。
さっき話していた人も言ってましたが、長谷川さんの歌声を生で聞くことが出来るのは貴重な時。今までの僕だったら長谷川さんの歌声が聞きたくてもすごい混雑するのなら諦めていた。でも、直々に誘ってくれている訳だし、行かない訳にはいかないよね。
「あ、そういえば…長谷川さんは聞いていますか?」
「な、なにを?」
「そろそろ席替えを行うそうですよ」
「せ、せきがえ!??」
なぜかそれを聞いた、長谷川さんはいきなり立ち上がった。急な出来事に僕も驚いてしまった。
「どうしたんですか?そんなに驚いて…」
「…ううん。なんでも…」
「この席になって2ヶ月ぐらい経ちますからね。クラスの間でもそろそろ席替えをしたいという要望があがっていましたし」
僕としても席替えはしたい。窓側の一番後ろの席になりたい。居眠りをしても大丈夫で日向ぼっこにはちょうどいい席。今の席が悪い訳ではないけど、そこよりも快適な席になりたいという気持ちはやっぱりあるのだ。
「そ、そうなんだ……席替えが」
「はい。楽しみですよね」
「…楽しみです」
それから僕は日直の仕事を終えると、自分の席で読書をし始めた。あんまり長谷川さんも僕と話すことは嫌だろうしね。




