悪魔の最後。
亜和は立ち上がった。
そして、秋元を睨みつけた。
「ほほぅ。やる気になったか」
「・・・・・・・・・」
何も答えない亜和。
早く失敗作を潰したい秋元。
2人の思いはまったく関係無いが、交差していく。
「07号、私はお前と戦いたくない。大人しく従えば良いのだよ」
当然、亜和には聞こえていない。そう思った。
しかし、今の言葉だけは"亜和"に聞こえていた。
人格の芯の奥底にいた亜和。
人を殺しながらも芯では泣き叫んでいた亜和。
秋元の命令に従いながらも苦しんでいた亜和。
本当の亜和。
今、涙を流している亜和。
「・・・・・07号」
「従えば・・・・みんなを・・・逃がし「つまらん」
「!?」
その時の秋元の顔は真夜に向けたからかいの顔とか、亜和に向けた残酷で喜びに溢れた顔でもない。
"興味のを無くした"顔。
冷たい瞳。
つりあがった眉ではなく、平面の眉。
口元もつりあがっても下がってもいない、そのまんまの平らな口元。
何より、なにもかもが冷たく感じた。
「お前もか」
「・・・?」
「お前も所詮は失敗作か」
『ズブリ』と言う鈍い音。
血が、色濃く流れた。
+ + + + + + + + + + + +
ある海域の真ん中。
水で出来た船。
乗っているのは3人とおまけ。
「おまけてヒドくね?」
「ヒドくねー」
「うー君、方向は合ってる?」
「うん。真夜ちゃんと亜和ちゃんの血の匂いがする・・・」
「そう」
船は進み、亜和の元へ向かって行く。
3人は亜和の無事を願った。
生きていてほしい。
秋元からの精神干渉から逃れてほしい。
思いはつのっていた。
「・・・・・・俺って・・・・・」
1人は本当におまけなだけであった。
それも、その後、後悔するような役立たずなおまけであった。
「まーちゃん・・・」
「ん?」
「・・・・ごめんね・・・・・」
兎雫丸はすすり泣きながら真夜に謝った。
そんな兎雫丸を許さないほど真夜は性格には難は無く、自分も十分に反省していた。
「ううん。アタシも酷い事言ってゴメンな」
「俺も酷いこと言われた」
「ごめんな、兎雫丸」
「ううん、ぼくこそごめんね」
「俺は?」
「兎雫丸、亜和助けような」
「うん!!!」
「いやお「黙れぇぇぇぇええええええええ」
男の顎にアッパーが見事に決まり、またまた見事に海に落ちた。
「いいの?落ちちゃったよ??」
「別にいい。あんなヤツ邪魔なだけだ。大体なんでアイツ船に乗ってたの?」
「さぁ?」
バンッ!!!
「!!!!???」
「たぁぁぁぁすけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!!」
巨大なイカ+おまけ。
「・・・・・なんじゃぁこりゃぁ!?」
「真夜さんそのセリフ・・・いや、そんなことじゃなくて何だ!?このイカ!!」
「・・・・かまやくんのしっぱいさく」
「え?」
「かまやくんのしっぱいさくのごみばこ・・・・」
「ゴミ箱!?ここただの海じゃないの!?」
「うん。あーちゃんがここをとおったからぼくもそのままきちゃったんだけど・・・・とおまわりすればよかったかなぁ」
しかし、真夜は笑った。
「そんなことない。いや、好都合だ。今から乗り物をコイツに乗り換える」
「!?」
「乗り換えるって・・・」
「アタシは約100%の水分、液体物を操れるんだよ?イカもほとんど水分で出来てるからアタシには・・」
「可能だ!!!!」
+ + + + + + + + + + + + +
「・・・あ」
血が滴る。
腹から血が滴る。
涙がこぼれ落ちる。
体が崩れ落ちる。
「い・・・・あっ・・・・」
髪がより一層白く染まってゆく。
手に力が入らなくなってくる。
血が床に流れていく。
目の前が見えない。
その時、少女の力が途絶えた。
少女は涙を流しながら・・・。