悪魔の多重の可能性。
亜和は研究所に戻った。
「あ。07号。早かったな」
「・・・・・・・・・」
亜和はやはり答えない。
「お前なぁ。話せないわけじゃないんだからはいの一言でも言いなよ」
そう言いながら亜和に近づいた。
すると亜和は大鎌を秋元の頭めがけて振った。
「!?」
「・・・・・・・・・・」
秋元は急いで避けたが、服の一部が斬れた。
「07号・・・・お前暗示に罹っていないのか?お前・・・僕を騙してたのか?」
「・・・・・・・・・」
しかし、亜和は答えない。
「・・・・・・07・・・・・・・号?」
秋元が不思議に聞いてみると、亜和は不気味な笑い顔を浮べていた。
それは、秋元でさえも不気味と思うほどの顔であった。
「07号・・・・・・もしかしてお前・・・・・・!?」
+ + + + + + + + + +
「うぅっ」
真夜の腕は痛みはあるが、佑太の応急処置で腐敗は進まなくなってきた。
「ああああぁあぁぁぁぁああぁぁぁあ」
兎雫丸はというと、木に縛りつけられていた。
「う・・・・兎雫丸は・・・・・」
真夜も一応心配していた。
「うー君は君の一言で覚醒しちゃったんだよ。君が亜和ちゃんを助けたいことしか考えてないから」
「・・・・・・・・あれはすまなかった」
佑太はため息をつき、真夜に静かに話した。
「その言葉はうー君の覚醒が落ち着いたら言いなよ。それに、あの歳なんだから、いつ覚醒が終わるか分かんないし、僕等みたいに覚醒を制御できないんだからさ。言動には注意してよね」
「・・・はーい」
この時ばかりは真夜も佑太に頭が上がらなかった。
『ガッタン』
「??」
「!?」
コースターからだれか来たようであった。
「もしかして亜和か!?」
真夜は嬉しく思った。
しかし、期待は裏切られた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
あの時の男であった。
「あ!!!テメェは!!!!」
真夜の大声で気づいたのか、男は真夜の方を見た。
そして、真夜に向かって走った。
「なんでこっち来んだよ!?」
しかし、男にはそんな言葉聞こえておらず、大声で走りってきた。
「助けてえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇぇぇええぇ」
「はぁ!?テメェ警察かなんかに追われてのか?」
「違う違う違う!!!お前と一緒に居たあのカワイ娘ちゃんが俺等の島をいきなり破壊してんだよ!!!」
「は・・・・?」
「だ・か・ら、お前の事をヤろうと思ったら、急に覚醒して暴れだしたあの娘!!!」
2人は確信してしまった。
確信したくなかったことであった。
「お前等アレだろ?俺等に復讐しにきただけだよな?なのになんで島全部破壊しちゃうんだよ!!それに狙うのは俺だろ!?なのに島の奴等のほとんど殺さなくてもいいだろ!!!なんなんだよ!!!」
男は大声で真夜に問い詰めた。
しかし、真夜には知らないこと。
真夜は失意の末、泣き崩れてしまった。
「お前が泣いてどうすんだよ!?!?俺が泣きたいくらいだよ!!!!」
しかし、その場のみんなは動けなかった。
+ + + + + + + +
「・・・・・・・・・・・・クククっ」
亜和は不気味な笑いを浮かべている。
「07号・・・・・どうした」
「あはははははっ!あははははははははっ!!!ボクねボクね!!!!」
「!?・・・・・・・・なんだお前・・・・・・・ボクって・・・・・・」
「ボクね、人の頭から血とか脳みそがバァァって出るの好きなんだぁ!!ねぇ、君はどう思う?」
秋元は驚いた。
亜和ではないこの口調と、狂ったサディストとも言えるこの発言。
「ねぇ?君はさぁ、好き?おなかを引き裂いた時に出る臓器と血!ねぇ、どう思う?」
亜和はいや、亜和もどきは秋元に楽しそうに聞いた。
しかし、秋元は冷静に聞いた。
「君は誰だい?」
亜和は驚いた顔をし、笑った。
「どうしたの?ボケちゃった?いつもボクのこと07号って言ってるじゃん?でもボクそんな名前じゃないよ」
「じゃぁ、なんて言うんだい?」
「ボクの名前はね、いる!!漢字はね依屡って書くんだ!!カッコイイでしょぉ」
「うん。かっこいいね。で、君は本当に6歳なのかな?体つきが6歳とは思えないけど?」
「あたりまえじゃん!!だって、ボクは亜和ちゃんの中にいるんだから!!」
秋元は興味深そうに笑った。
「へぇ。07号の中に」
「うん!!!他にもいるよ?」
「ほぅ。じゃぁ、他の子も見てみたいな?」
「うん!!!」
亜和の無邪気な笑顔が一瞬不気味に揺らいだ。