表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/23

2-1 可愛い嫉妬と可愛くない嫉妬がある。これは前者かな

翌日。今日は仕事が休みなことに加え、昨日の謝肉祭の疲労もあって、私は10時くらいに起きた。


どうも食卓の方が騒がしい。



「まったく、お兄ちゃんはさ……分かりやすいよねえ……」

「べ、別にそんなんじゃねえよ」



そんな声が聞こえてくる中、私はリビングに向かった。



「おはよ、サラ!」


アデルはいつになく爽やかな笑顔で挨拶してきた。

食卓には、ハムやベーコンをふんだんに使い、焼いたニンニクの匂いが香ばしく漂っていた。


「な、なんか豪華じゃない?」

「ま、まあさ。昨日は行商でいい品をたくさん手に入れたからさ。それ使って2人にご馳走したくってな」



なるほど、確かに私の住む街では感じない、ハーブの匂いがする。

だが、そういうアデルを妹のルチナはからかうように笑う。



「あはは、お兄ちゃんは本当はさ。ベルトランに対抗意識燃やしたんでしょ? 朝から凄い時間かけてたもんね?」

「だ、だから違うって言ってるだろ?」

「まあねえ、あんなにかっこいい人にお姉ちゃんが近づいたら、そりゃ意識しちゃうよね? ……ま、むだな抵抗だと思うけどさ」



ふふん、と両手広げて笑うルチナにアデルはむっとするような表情をした。



「おい、てめ! 覚悟しろよな!」

「きゃー、野蛮人! 助けてー!」



そういいながら、アデルはルチナにヘッドロックをかけてきた。

無論、本気ではない。いつものじゃれ合いだ。



「もう、痛いなあ……」

「フフフ、ルチナがからかうからよ」

「えへへ……。可哀想なお兄ちゃんのために、私も手伝ったんだ! ほら、早く食べて?」



全く、本当にこの兄妹は仲が良いな。


私は椅子に座り、2人が作ってくれたご飯を食べた。料理上手なアデルの作ってくれるご飯は、私にも楽しみだった。



「うん、おいしい」

「だろ? 料理の腕なら、ベルトランにも負けないからな」


そういうと、またルチナがジト目でアデルを睨む。



「……やっぱ、意識してんじゃん……。まあ、お姉ちゃんを取られるの、嫌だもんねえ?」

「うるせえよ。……つーか、お前も少しは料理勉強しろよ? ひでー味付けじゃん」

「フン! 一生お兄ちゃんにご飯作ってもらうからいいもん!」



やっぱりか。

料理の中に極端に塩辛いスープがあるが、これがルチナの作ったものなんだろう。


彼女は味付けをフィーリングで行ってしまう傾向があるので、正直そこは苦手だった。



「それでさ、サラ。今日は何時に待ち合わせるんだ?」

「12時よ。夕方には帰ってくれるから」



そういうと、少し焦るような表情でアデルは尋ねる。



「そうか……な、なあ。夕飯は何が食べたい? 好きなもの作るよ」

「やったあ! じゃあさ、ミートローフがいいな!」


ここぞとばかりにルチナが横から口を出したたま、アデルは少し呆れたような表情を見せた。


「ばか、お前には聞いてねえよ! サラに聞いたんだっての!」

「あはは! ……それじゃ、私もミートローフがいいかな」


ミートローフは私も好物だ。

元の世界ではあまり食べなかったが、この世界では一種の『節約レシピ』としても有名である。


それを聞いてアデルはうなづく。



「そうか? まあ、たまにはいいか。分かった、早く帰ってきてくれよ?」

「お姉ちゃん、気をつけてね?」



アデルは昨日から妙に私に気を使ってくれている。それについては嬉しく思いながらも、私は出かけた。






「えっと...ベルトラン、ですよね?」

「ああ、済まないな、こんな格好で」


ベルトランはすでに公園に来ていた。

昨日最初に会ったときと同様に軍服と兜を身に着けており、一瞬誰だか分からず、思わずそう尋ねた。



「街中では兜を取らないんですか?」

「ああ。……まあ、正直私は人前でむやみに顔を見られたくなくてな……」



言われてみれば、昨日ベルトランが顔を見せた時、周りはざわざわと色めきだった。

……それほど、この人の容貌は優れている。


あまり目立ちたくないからこそ、あまり人には顔を見せたくないんだろう。



「それで、どこに行くんですか?」

「この先にある兵舎だ。そこで詳しい話をすることにする」


その場所なら、テイラーと結婚していたころに行ったことが何回かある。

テイラーは滅多に兵舎に顔を出さなかったから問題ないと思うが、鉢合わせしないことを願おう。


……というか、そもそも私が元王国の文官として働いていたことを伝えるべきだったな。



「ええ。……それじゃ行きましょう?」


そういうと、私たちは兵舎に向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ