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仕事の才能に嫉妬されて婚約破棄を告げられた元最強バリキャリは、異世界でも『本気のマーケティング』を始めます  作者: フーラー
第3章

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3-2 異世界で役立つ「現代知識」は努力しないと身につかないのだろう

それから1週間ほど経過した。



(さて、そろそろ明日くらいにはベルトランに報告しないとな……)



私は、一応新装備の腹案が決まったので、説明用の資料を書き起こしている。

こういうスキルは、元の世界でも十分培ったのを生かせている。



(フフ、それにしてもベルトランって、本当に面白い手紙を書くのね……)



また、日々の進捗は書簡で報告を行っている。

幸い、王宮とこの道具屋はそこまで距離が離れていないので、一日に1往復出来るためだ。


朝に私が報告を行い、夕方にそれをベルトランが返信する。

彼の手紙には、単に事務的な連絡だけではなくユーモア溢れる文体で日々の出来事を面白おかしく書いてくれるため、最近では私は読むのを楽しみにしていた。



(それに、私の知りたい内容を全部理解して、資料も送ってくれるし……明日会うの、楽しみだな……)


そう思っていたら、とんとんとノックの音が聞こえてきた。




「調子はどうだ、サラ?」



いつものようにアデルは夜食を持って私の部屋にやってきてくれた。

今日は、野菜のシチューをパイで包んだご飯だ。


毎日こんな風に食べていると、太っちゃうな。今度ダイエットしないと。




「うん、今のところは問題ないわ。……見る、この資料?」

「あ、いや……辞めておくよ。正直俺は文字があまり読めないからさ」



アデルはそもそも基礎的な読み書きは商売で最低限必要な分しかできていない。

ルチナが物心ついて、ある程度教会で読み書きを教わるまでは相当どんぶり勘定だったことが伺える。


それでもアデルは、私が書いた資料を見つめながら、ぽつりと呟く。



「やっぱりさ、こういう資料も『読ませるコツ』見たいのもあるのか?」



そういうところに気が付くあたり、やっぱり地頭自体はそんなに悪くないんだな。

……寧ろアデルが読み書きが苦手なのは、ルチナが全部仕事を引き受けてしまっているからなのかもしれない……というのは考えすぎか。



「ええ。そういうスキルも必要だから、元の世界ではたっぷり勉強してきたのよ」

「そうなんだな。……なんかさ。『現代知識』ってのも捨てたもんじゃないんだな」

「……そうね」


まったくそうだと思う。

正直、現代社会で『消費者として得た知識』、具体的には家電の概念や知識などこの世界では本当に役に立たなかった。



寧ろ役に立つのは『学校で学んだ数学や歴史の内容』や『仕事の中で培ったスキル』ばかりだった。


たとえば歴史。


過去の出来事を『面』として理解していると『戦争や技術の革新が起きると、どの産業が隆盛し、それによりどのような弊害が生じるのか』『先人がどこでどんな失敗をしたのか』を知ることが出来る。


他にも、国語で学んだ基礎的な文法読解は、回りくどい報告書を読むのに役に立った。


仕事でも同様だ。



自分が『身に着けたい』と思った知識は勿論だが、資料の作り方やお茶の淹れ方など、皮肉にも上司から押し付けられた『役に立たなそうなスキル』も、とても役に立った。



(結局、異世界で本当に大事な『現代知識』ってのは……まじめに仕事することでしか得られないのかもね……)


そう思いながらも私は夜食を食べ終えて皿を置いた。



「ご馳走様、アデル。いつもありがとう。……何かお礼をしなくちゃね」

「いいよ、別に。……その……それならさ、俺の代わりに……ベルトランの力になってくれよ。あいつはいい奴だからさ」



それは私も分かっている。

ベルトランは、王子様という肩書を抜きにしても好意を持っている。


容姿が優れているというのもあるが、穏やかな物腰であり、そして高い教養があることもあり、私と話があう。


……正直、アデルが相手では話せないような、難しい理論なども次々に学んでいく彼には、尊敬すら覚えていた。


そう思っていると、私は幼馴染のアデルに、ベルトランについて聞きたくなった。



「勿論よ。……そういえば……ベルトランってさ、好きな人とかいるの?」



だがそれを訊くと、アデルは少し悩むような素振りを見せた後、少し不愉快そうな表情を見せる。



「……さあな。そんなこと俺に聞かれても分かんねえよ」

「う、うん……」

「それより、皿は片づけておくな。あまり夜更かししすぎんなよ? ベルトランも心配すっからさ」

「……分かった。お休み」



そういうとアデルは出ていった。



……やっぱり、私はアデルに甘えちゃいけないよな……。

そんな風に思いながら、私は彼を見送った。




すると入れ違いに、先ほどよりも低い位置が叩かれる音が聞こえてきた。



「ねえ、お姉ちゃん……今、いい?」



珍しい、ルチナか。

今夜は千客万来だな。



「ええ、いいわよ?」



そういうと、ルチナはネグリジェ姿で部屋に入ってきた。




「あのさ、お姉ちゃん……」

「なに?」



いつもの可愛らしい様子とは違う、どこか深刻な表情をルチナはしていた。



「お姉ちゃんってさ。……お兄ちゃんのこと、どう思ってるの?」

「どうって……素敵な人だと思うけど……」

「それはさ。……結婚したいっていうこと?」



そういわれて私はルチナの目を見た。

……どういうことだろう?

私がアデルと結婚して、一緒に道具屋を盛り立てて欲しいということか?



もしそうなら、私はそれでも構わない。

アデルのことは正直、異性としては惹かれていないが、家族として一緒に過ごすなら、きっとそんな日々はとても素敵なものになるだろう。



……だが、それはアデルにとって残酷ではないかとも思う。



そう思っていると、ルチナが呟く。



「あのさ……。多分お姉ちゃんは知らないと思うけど……私はさ。お兄ちゃんとは本当の兄妹じゃないの」

「……え?」


そういわれて私は驚き、詳しい話を教えてもらった。

どうやらルチナの話を訊くと、そもそもアデルのほうが、ルチナの家に養子として入ったとのことらしい。



「それでね……? お姉ちゃんのことは大好きなんだけどさ……。お兄ちゃんと結婚するっていうのは……ゴメン、やっぱり辞めてほしいの……」



その一言で、私はその先の話の展開が全て読めた。……いや、読めてしまった。



「私はさ! お兄ちゃんのことが本当に好きなの! ……まだ私は小さいから、お兄ちゃんは、ただの妹だと思っているんだけど……本気で、結婚するつもりだから……」

「…………」



やっぱり、そうだったか。

ルチナのその眼は、本気でアデルを『一人の男として』愛している男の眼をしている。



「あのさ、お姉ちゃんは可愛いし頭もいいし! 正直私の憧れなの! ……だから……もし、お姉ちゃんが一緒にいたら……私じゃ勝てないでしょ?」

「……そんなこと……」

「ある! ……だってお兄ちゃん、いつもお姉ちゃんのことばかり見てるもん! 私のこと、前より見なくなっちゃったから!」



……そうだったのか。

アデルが私に好意を持っているというのは、正直ルチナの思い込みかもしれない。


だが、ルチナにとっては少なくとも『自分のことを第一に思ってくれない』ということが何より辛いのだろうことは理解できた。


そう言いながらルチナは、いつものように私に甘えるような仕草を見せた。……目は真剣なままだが。



「だから、お姉ちゃん? ……お願いがあるの……」

「うん……」



そして私は、ルチナから言われたお願いを承諾することにした。

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