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仕事の才能に嫉妬されて婚約破棄を告げられた元最強バリキャリは、異世界でも『本気のマーケティング』を始めます  作者: フーラー
第2章

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2-5 教育水準が違いすぎて会話ができないのは辛いのでしょうね

その夜。

私は道具屋に戻ったあと、アデルとルチナの3人で夕食を食べた。



「ふう、美味しかったな……」



アデルの作ったミートローフはいつもよりひき肉が多く入っていたためか、非常に美味なものだった。


そんな食事を楽しんだ後、私は自室(現在は、アデルの部屋を間借りしている)に戻ってベルトランから借りた本を開いた。



「さて、頑張らないとな……」



ベルトランから借りた資料は、過去の戦況報告や兵士たちのケガの内訳などだ。

この世界の兵士たちがどのように生きて、戦って、そして死んでいったのかを少しでも克明に理解する必要がある。



(私が今回の仕事でやることは……兵士を喜ばせることじゃない、死なせないことよね……)



私はそう思いながら、ランプの火を少し明るくして、資料を何枚もめくる。


「えっと……これは……こうで……」



幸いなことに読み書きの殆どは婚約していた頃にテイラーに教えてもらっている。

基本的には英語のそれに文法が近かったため、元の世界では得意科目だった私にとってはそこまで難しい内容ではなかった。


そしてしばらく戦史を調べるうちに、私はふと疑問に思った。


「ここでもそうだ……100倍もの戦力差があるのに、負けてる……それにしても……魔導士が強すぎるわね、やっぱり『ファンタジー世界』って……」



この世界の戦争はいわゆる『中世の戦争』とは、兵士の外見以外はまるで異なることが分かった。

数人の優れた魔導士が戦場に出るだけで、数百倍の戦力を簡単にひっくり返されてしまうのだ。


たとえるなら彼らの一人一人が『膨大な量のミサイルを積んだ、歩くロケット砲』であり、彼らの存在だけで戦争の殆どが決まっている。



(現代日本の技術力なら、魔導士をミサイルや狙撃銃で撃破できるけど……この世界じゃ無理よね……)



この世界にはまだ火薬や大砲といった文化が存在しない。

仮に存在したとしても、戦況を覆せるほどの砲を用意できるような冶金技術も鉱石の採掘技術もない。


そのため、魔導士を倒すには、膨大な兵士を投入して無理やり突破するか、相手以上の実力を持つ魔導士と撃ち合いを行うか、或いは謀略に嵌めて失脚させるしかない。



(だからこそ『魔導士を倒すことが戦争に勝利する近道だ』って、兵士さんたちは思っていたみたいだけど……なんか違う気がする……)



そもそも、こんなに魔導士だけで戦争が決まるなら兵士なんて必要なのか?

魔導士同士を闘技場で戦わせて、戦の勝敗を決めるのではダメなのか?

そう思っていると、私は別の疑問が浮かんだ。


(そもそも『戦争に勝利する』ってどういうこと? 王様を倒せばいいの? 兵士をこうさんさせればいいの? 違う……そこに、今回のヒントがあるかも……)



そんな風に思っていると、とんとんとドアがノックされた。



「入っていいか、サラ?」


アデルの声だ。



「ええ、いいわよ」

「ああ。……お疲れ様、良かったら少し食べるか?」



アデルは夜食を持ってやってきてくれた。

……やっぱり気が利くな、アデルは。



「うん、ありがと」


軽くトーストした黒パンに、ベーコンとレタスが挟んである。

この時代のベーコンは現代のものよりだいぶ塩辛いが、私にとってはちょうどいい。



「凄い美味しいわ。ありがと、アデル」

「あ、ああ……」


そういうと、少し恥ずかしそうにアデルは顔を掻く。



「ところで、その資料はベルトランから借りたのか?」

「ええ。……この世界のこと、もっと知りたいなって思ってね」

「なるほどな。マーケティングってやつのためか?」

「そんなところよ。ただ……」

「ただ?」

「やっぱり分からないところが多いから、明日ベルトラン様に聞いてみようと思うの」

「あ、ああ……」



アデルは、学問の素養がないこともあり、殆どこの内容を理解することが出来ないだろう。

そのこともあり、少しバツが悪そうな表情を見せた。



「あ、あのさ……ベルトランはさ、いい奴だろ?」

「ええ。ちょっとシャイなところがあるけど、素敵な方よね……」



彼は王子様という立場だが、全然私に対して威張る様子も見せずに、私に接してくれる。

正直、私は彼に惹かれているのが分かる。


……まあ、彼のほうが私を本気で好きになってくれるとは到底思えないのだが。



「そ、そうか……もしかしてさ。その……この仕事が終わったら、王宮に戻るのか?」

「え?」



そういえば、私がこの道具屋にいるのは、元々は王国側の配慮によるものだったことを思い出した。



「……うーん……正直今はまだ、戻りたくないかな……テイラーのこと、聞いてる?」

「いや、簡単には王国の人たちから聞いてるけど、詳しくは知らないな」

「そういえば、詳しく話していなかったわね、私がなんで婚約破棄されたか……」



そういって私は、王宮の文官をクビになった経緯を解説した。

それを聞いてアデルは、驚くと同時に私に同情的な表情を見せる。



「そうか……そりゃ、酷い話だな……」

「うん……。けどさ、ある意味良かったかなって思うんだ」

「どうしてだ?」

「アデルとルチナ、あなたたちに会えたからよ」

「……ああ……俺もだ」



そういうと、アデルは少し嬉しそうな表情を見せた。



「ルチナもお前が来てから、楽しそうだしな。だけど……」

「なに?」


少しアデルは口ごもったような様子でぽつりと呟く。



あ、いや、何でもない! ……お休み、サラ!」

「……うん、お休み……」



そういうとアデルは出ていった。



(そういえば……ずっとこの生活を続けたいと思ったけど……私は居候の身だったよね……もしアデルが結婚したら、ここにい続けることは出来ないし……)


改めて、私は自分が置かれている立場について思い出した。



……今の私は、市民権がない。

また家を借りるというのも考えたが、そもそもこのあたりには私が借りれるような家賃の家はないし、あったとしてもスラム街のような治安の悪い場所でしかない。



となると、もしもアデルが結婚するかルチナが婿を取るかした場合、私は今住んでいる家に住むことが出来ない。



となると、残された手段は一つ。



(私がアデルと結婚して、家族にしてもらう……ってのは……最低よね……)



だめだ、そんなことはアデルも喜ばないだろう。

……あくまでもアデルは、王国の命令で私を家に置いてくれているだけなのだから。



そう考えると、私はアデルの親切さに甘えているだけなのかな。



(はあ……)





急にそう考えるとやる気がなくなってきた。

私はとりあえず考えるのをやめ、一度ベッドに入ることにした。

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