2‐2 それはすごいことよ
「初日からそんなに? それはすごいことよ」
翌朝木曜日、彼女が来たことを伝えると、カウンセラーの光里先生は目を丸くした。約束を守り、彼女が私に書いて伝えた内容には触れないが、彼女が筆談用のホワイトボードを持参したこと、多少のやりとりがあったこと、一度だけ頷きが見られたことは共有した。昨日のうちに七瀬先生に共有した内容と同じである。
「今日は来ないみたいですね」
「まあ、それは普通。週一くらいでコンスタントに出て来られれば上出来だから」
光里先生は片目をつぶって見せた。今日も黒一色のワンピース姿である。
「一週間の間に先生方が申し送りのメモをこうして挟んでおいて下さるのね。先生は、五年四組の佐野ミラさんって、名前はもうご存じ? これによると、彼女のお母様が来週私の面談にいらっしゃるみたい。枠が取ってあって」
光里先生はスクールカウンセラーの記録簿らしいファイルを開いていて、面談の予約表を見せてくれた。
「たぶん、そこでの話をふまえて、近々彼女たちに関する校内支援委員会が開かれるんじゃないかしら。委員会には先生も同席して下さるんですよね?」
「ええと、はっきりと聞いてませんけど、通常養護教諭も出席するものですか?」
「ええ、恵先生はよほどのご用事でもなければ毎回出て下さってましたね」
ならば私も出るのだろう、おそらく。
恵の予想通り、佐野ミラさんも保健室に、という話になるのだろうか。無理なら無理と断っていい、と彼女は言ったが、実際そうできる雰囲気ではない。
まとめて私に任せようにも、二人の相性などあるだろうに。と、あたかも話は決まっているかのように、ぼんやりと考えている自分がいた。