PRACTICE ③
香狩がミニ三脚をくっ付けたままスマホを立ち上げタップすると、鈴女のポケットの中から着信音が響いた。
「ビデオ通話にしてあるから出てくれないか?」
鈴女が自分のスマホをタップすると、画面に“屋上の中に居る自分”が映し出される。
「エナジーのレベルを上げて行くと結界の中は見えなくなり、更に上げると結界に近付くものを焼き尽くす様になる」
「武器になると言う事ですね」
「そうだ! でもこれは単にエナジーのレベルを上げるだけだからそう難しい事では無い。エナジーさえ供給できればね。一番難しいのは“無為”の結界だ。」
「むい?」
「思い出してごらん。キミと初めて会った時、私が張った結界を……」
「ああ!! まるで私達がそこに居ない様でした」
「それが、“無為”の結界だ。まず私がやって見せよう」
香狩はミニ三脚付きのスマホを据え置いて鈴女の傍らに立った。
「画面を見てごらん」
鈴女が手元を確かめると、スマホの画面はいつの間にか鈴女達が居ない屋上になっている。
「試しに結界の中に物を入れてみようか?」
香狩が僅かに視線を動かすとカツサンドの透明パックがふわりと持ち上がり、結界の中へストン!と飛び込んで来た。
けれどもスマホの画面上は単に透明パックが風に煽られて屋上を転がっている様にしか見えない。
「これを……私がやるんですか?」
「やり方はもう頭に入っているだろう?」
少しばかり悪戯っぽく笑う香狩に鈴女は学シャツを腕まくりする。
「よ~し!!やってみます!!」
「待て待て!使うエナジーはキミ自身のではなく、“ウェーブグライダー”に貯えたエナジーを使うんだ!」
「は~い!」と応えた鈴女はトートバッグかウェーブグライダーを取り出した。




