ランチミーティング
「で、何をするんですか?私は」
小町はブリックパックのジュースに刺さっているストローから唇を離して香狩に尋ねる。
「鈴女のスナップ写真を撮って欲しいの」
「ははあ~!それをあのジェントスとか言うエロ大尽に進呈する訳ですね」
「ふふ、そう言う事! ジェントスさんは好みがうるさくてね。鈴女がストライクゾーンなの。まったく私の見込み通りで呆れちゃうんだけどね」
「うわっ!笙悟陰センパイ!お顔が今、“エチゴ屋”でしたよ!」
「じゃあ、ジェントスさんが悪代官?」と鈴女。
「そうそう!」
「では、私はこう言われるのね『お主もワルよのぉ~』」
「プッ!笙悟陰センパイ! その声色! プロも真っ青な演技力ですよぉ!!」
「キャハハハ! センパイ可笑し過ぎ~!」
お昼休みに屋上のベンチでランチミーティングと洒落込んだ鈴女、香狩、小町の三人は始終和やかだ。
ひとしきり笑った後、小町は真顔になって尋ねる。
「冗談は抜きにして……鈴女は、ホントにいいの? 写真とは言え、そんなエロオヤジに愛でられて……」
「えっ?! でも小町だって、そんな事はあるんでしょ?!」
「私は仕事だから……」
「私だってお仕事だと思ってるよ! 笙悟陰香狩の学校付き秘書として任命されたんだから」
「でも、それって“お時給”は出ないでしょ?!」
「うん、その代わり……」と鈴女は澄ました顔でカツサンドを食んでいる香狩の方を見やる。
「香狩センパイには私の先生になっていただくの?」
「先生って、何の?」
まさか「魔女の……」とは言えない鈴女に香狩が助け舟を出す。
「小町さんも『TUKIMI WATCH』って時計メーカーはご存知でしょ?」
「そうなの?! 叔母様が槻水綾女さんってお名前だから、ひょっとしたらなんて思ってたけど……やっぱり鈴女は関係者だったの??」
「うん!私のお家はみんな槻水時計舎で働いているの。亡くなった私のお祖父様の兄……伯祖父様が社長をしているの」
「鈴女はいずれ槻水時計舎を継がなければならない立場で……学校でも時々仕事をしている私の傍に居れば、女性の経営者ってどういう感じが何となくは分かるだろうって事になったのよ」
「そうか!!そうですよね……まさかセンパイが笙悟陰財閥のCEOとは思わなかったけど……」
「JKがCEOじゃおかしい?」
「面白いけど普通じゃないですね!」
「普通じゃない?」
「だって普通ならCEOって『お父様が……とかお祖父様が……』じゃないですか!」
「それは仕方ないわ。二人共とうに亡くなっているもの」
「それは……ごめんなさい……でも笙悟陰センパイって謎だらけですね」
「ふふ、だから美魔女なのよ。ホントこのカツサンド美味しい! 仕事の疲れが吹っ飛ぶわ!」
「もう!センパイったら!」とホッとした鈴女はケラケラ笑う。
「さて、話を戻すけどね。アイドルとして活動している小町なら……学校生活の中で垣間見せる鈴女の……下品でないあざと可愛らしい姿が撮れるかなって……“魅せる立場”としての感性を小町は持っているだろう?」
「ええ、そりゃまあ……セルフプロデュース出来なきゃ生き残れない業界ですからね」と胸を張って見せる小町に
「凄い!小町ちゃん! さすが!!」と鈴女は手をパチパチする。
「引き受けてくれるならささやかなお礼だけど……あなたが“センター”をキープできるよう笙悟陰グループ挙げてサポートするよ」
「私も『TUKIMI WATCH』のイメージガールに小町を推しちゃう!」
「う~ん! こうまで言われちゃやるきゃないよね! でもリスクはヘッジしなきゃいけないから鈴女の保護者の方にも目を通してもらった方がいいと思うんです」
「小町はやっぱりオトナだね。最終的に私の部下を鈴女の保護者の……」
「綾姉様です!」
「そう、槻水綾女さんの所へ画像を持って挨拶へ行かせるよ。本当は私が直に行くつもりだったんだかね」
「センパイ!言葉遣いがJK離れしてますよぉ~」
「あら、やだわ! ホントは私が行こおかって思ってたら部下のスパダリおにーさんから止められちゃったんよ!『そんな事、させられません!』って! それって鈴女に対して“きまZ”じゃん! だから『私は“よきまるもんざえもん”だかんね!』って言ったんよ! そしたら『槻水のお嬢様方に不愉快な思いを抱かせはいたしません』ってサラリ!と返されて“はにゃ?”ちゃったよ」
「プッ!!セ、センパイ!!」
「クッ!キャハハハ!」
プラチナブロンドにエメラルドグリーンの瞳、彫刻の様な顔立ちの超絶美女から発せられる微妙な“Zスラング”にガチ現役のJKふたりは腹を抱えて笑った。
。。。。。。。
鈴女ちゃん(案)
2年ぶりに描きました(^^;)
2年以上ぶりに更新しました。
うまく繋がってるかな?(^^;)
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