鈴女のおせっかい
「いらっしゃい …えっ?!」
ぬぼっと顔を出した雷電池 新に鈴女はちょっと戸惑ったようだ。
「あの…えっと…」
「スペシャル鮭弁当」
「えっ?! あ、はい…」
奥から綾女が声を掛ける
「あ! 新くん おはようございます。いつもの…ね。タルタルソース多めで…」
「はい!お願いします」
ドギマギから少し解放された鈴女は照れ隠しに奥へ声を掛ける。
「スペシャル鮭弁当、お願いします」
「はいはい、鈴女! そろそろ時間でしょ? ありがとう! 上がって用意なさい…今日も暑いみたいよ」
「今日はブレザー無しでベスト着て行きま~す」と鈴女は2階へ上がって行く。
それを目で追った綾女は出来上がったお弁当と共にカウンターに顔をのぞかせた。
「お待たせしました。 ねっ?! 鈴女を助けてくれた“イケメンのクラスメート”って新くんでしょ?」
綾女からこんな風に言われて
「ん、たぶん そう かな…」
と新は返す。
「ふふ、やっぱり! 実はね、新くんに…鈴女の事をお願いする前に…珠子センセイに反則っぽいお願いしてたのよ」
「珠子センセイってひょっとして…」
「そう、学園長先生の事よ。私が高校生の時…私の担任をしてくださっていたの…私達の故郷の高校…鈴女も通っていたあすなろの郷高校で…それでね、『鈴女を私の知っている“とってもいい子”と同じクラスにしてあげてくださいって』!」
「えっ?! いい子って、オレの事ですか?!」
「ふふ、ごめんなさいね。『子』は無いよね。もう高校生ですものね。 でも…『いい人』って言うのも…オバサンの“イイ人”みたいに聞こえてしまって、申し訳ないでしょ?」
「綾姉さまはオバサンじゃないよ」リュックを背負ってトントン降りて来た鈴女が不満げな声で叫ぶ。
「ねっ?! カンダチくん!」
「もちろんですっ!!!」と新
「はいはいありがとうございます」と綾女は笑いながらお礼を言って
「…こちら500円のお釣りです。いつもお買い求めいただきありがとうございます。それから…姪の…鈴女の事も、どうかよろしくお願いします」
と今度は丁寧に頭を下げた。
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「ねっ!ねっ! カンダチくんってさ!」
新と横並びになれるよう少し足早に歩きながらも顔は『プッ!ククク』の鈴女は…声を掛ける。
「ひょっとして綾姉さまの事、気になる?」
「な、なんだよ。急に…」
「だってさ、クラスの女子への“当たり”とは天地!!、酢亀なんだもん」
「そのスガメってなんだよ?タガメのこと??」
「あははは、私の故郷には居るよ、タガメ! がっつりとカエル捕まえているのを見たことがある。日本じゃ絶滅危惧種らしいけど東南アジアじゃ食用で…なんでも胸のあたりから洋ナシの香りがするんだって」
「マジかよ」
「どうだろうね…私もニオイは嗅いだこと無いから…じゃなくて!! スガメだよスガメ!!」
「スガメ?? それは食べれるの?」
「うん、食べれるよ! スッポンだもん。お酢で食べるんでしょ?」
「いや! それ違うと思う…食べたことないけど…」
「え~!! だってあーちゃん言ってたもん」
「それ担がれたんだよ…ちょっと待ってな。検索するから…」
二人してうっかり“スッポンのさばき方の動画”を見てしまい鈴女は涙目になった。
「女の子…いじめた!! 酷いヤツだ!!」
「人聞きの悪い事言うなよ…そもそも、その“あーちゃん”が『月とスッポン』がらみで出鱈目言ったんだろ?」
「あーっ女の子に罪被せた!! やっぱり酷いヤツだ! 綾姉さまに言いつけてやる!!」
「おい!!ちょっと!」
「それは困る??」
鈴女は、もう嘘泣きの目をちらっとあげて無言の新を探る。
「やっぱり!! 困るんだ!」
プククク笑いを爆発させた鈴女に新は憮然とする。
「別に…んな事は、無いって!」
「ダメダメ!鈴女は聡い子なんだからさ、分かっちゃうの! 綾姉さまは…今は傷心なの! カンダチくん知ってる?」
「うっ、うん…」
「それなら話が早い! キミは若いツバメとなって綾姉さまの心の支えになるのだ!! ああイケメンの愛人かあ~ロマンだわ…」
新は赤らめた顔がバレないようにと無駄な抵抗を試みる
「なにそれ!意味わかんねえ! キミはいったい何時代のひと??」
「失礼ね!“令和”のJKに向かってその言い方は…十…」
と言い掛けて奇跡の魔女でしかもJKの“センパイ”の事が頭に浮かんで鈴女は
「あっ!」と口を押えた。
「カンダチくん。急ご! ミッションアマンは後回し!遅刻する!」
テテテと走り出す鈴女を見て、新は『私と同じふわさらの髪』と言った綾女の言葉を思い出す。
『綾女さんも…あんなふうな女の子だったのかなあ』
鈴女の事をつい見とれてしまった新に、鈴女は振り返る。
「カンダチくん! マジ、ヤバいよ!」
「おう!」と返事を返しながら新はそのストライドで鈴女に忽ち追い付いた。
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「ねえ、カンダチくん。私、今日は大丈夫だからね。ほら、この通りリュック、前抱っこしたし、電車乗ったら反対側のドアまで泳いで行くから!! ただね! その時、この前抱っこリュックの厚みが邪魔になるのかなって… あれっ?! 今、ひょっとして…あんまり“厚み”ないとか“セクハラ的”なこと考えてるんじゃないよね!!」
「ねえよ」
「不埒なこと考えてると“ミッションアマン”は無しだからね!! あっ!それから放課後は香狩センパイと約束があるから…いつ打ち合わせするか考えとくね…」
リュック前抱っこでどしどしとホームに降りて行く鈴女を見ながら『かなりの暴走女だな』と独り言ちながらも
『綾女さん、こんなところまでは似てないよな…』と考えてしまう新だった。
。。。。。
イラストです。
中学時代の新くん。詰襟の前、かなりはだけてますが…女子が“肉弾戦”を仕掛けるほどイケメンに描けたかしら…(^^;)
バタバタと読みづらくスミマセン
勉強不足です(^^;)
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