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日常生活は異世界で。  作者: 凍々
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どの世界でも母は強し……!!

 ご懐妊です、と言われ固まっていた私。

 そりゃね、それなりの事をしてきた訳なので、当然の結果とも言える訳なのだけど、実際にそうなると驚き過ぎて言葉が出てこないんだわ……。

「お、俺達の……子供が……できたんですか……!?」

「その通りですよ〜♪本当に、本当に心から喜ばしい事ですわ〜♪」

 ちなみにこんな感じでした〜、と【解析(レント)】の結果を見せてくれる彼女。フェンさんの片手からすっと立体映像みたいなものが立ち上がってきて、それによれば私の下腹部の辺りに何か小さな光が灯っているようだった。

「ええと、ここに見えます小さな光は生命反応を示しております〜。ここから感じられる波動はバクゥ様とヒカゲ様のものに酷似しておりました〜。故にここに宿る命はご両名のお子様で間違いないと断言させて頂きますわ〜♪」

 宿る命と聞いて、私は無意識に光があった場所を見ながらそっと手をやって擦ってみる。

 外からじゃ見えないけど……ここに私と獏くんの子供が……いるんだ……!

 そう思ったら段々と実感が湧いてきた気がする。それに喜びの気持ちが溢れてきて、何だか涙も溢れてきた。

「獏くん……私……私……!」

 途端に泣き始めた私を見て、彼はちょっと驚いた様子だったけど、彼も涙目混じりの笑顔を浮かべていた。

「ひぃちゃん……そうだよ、俺達に新しい家族が出来たんだ!俺達が待ち望んでた……新しい家族が増えたんだ!!」

 新しい家族って言葉にまたも涙が溢れてくる。むしろ号泣でずっ……!

 私が物心付く前に両親はもういなかったし、もちろん顔も覚えていない。代わりに育ててくれたおばあちゃんももういない。それからはずっと一人だった。

 獏くんと知り合う事が出来て、彼と交際して、結婚する事を決めて、家族になろうって言ってくれて。まあ、途中で世界が変わってしまったけど……ようやく私は一人じゃなくなった。

 こっちの世界に来てからは、お義父さんとかフェンさんとか、アサィさんとか、フラロウスさんとか、ロゥジさんとかアリーナちゃんとか、他の国の人達とか、今までの人生で一番多く知り合いが出来たと思う。

 今まで寂しいって思っていた心の隙間が少しずつ埋まっていくような思いもあって、それも嬉しいって感じてた。皆とっても個性的な人達ばかりだけど、優しい気持ちの人ばかりだったから。

 皆のお陰で満たされていった心だったけど、それでも埋まっていなかった部分があった。

 それは……血の繋がった家族がいて欲しかったって事。

 心が通じ合っていれば、血の繋がりを超えるとも思う人もいるかもしれない。でも私はそうじゃなかったみたいで、表面上は出してはいなかったけど心の奥底で求めていたんだって思う。

 だから、今こんなにも嬉し涙がとめどなく溢れてきちゃうんだよね……心から嬉しい、嬉しいんだって!!

 私以上に喜びを顕にしていた獏くん。おもむろに私を抱き上げて、その場でくるくると回ってみせた。勿論ながら彼は満面の笑みであります。久々のお花畑のエフェクト付きでね!

 き、気持ちは分かるんだけど……い、今回っちゃうのはまずいかなぁ……うぷっ……。

「バクゥ様〜……嬉しいのは私も一緒ですが〜、ご母体を労って差し上げて下さいね〜??」

 私の気持ちを代弁するように、フェンさんがさっくりと釘を刺してくれたよ……せ、先生ナイスです!

「あ……すみません、喜び余ってしまって……ごめんね、ひぃちゃん……!」

 釘を刺された獏くんは、即座に動きを止めて、そっと私を元の位置に戻してくれた。

 出来れば大丈夫って言いたかったけど……今口を開くのはちと危険かもだったので、口元を押さえながら静々と首を縦に振る。

「え……ひぃちゃん!?顔色が……ちょ、ちょっと待って……!!」

 その後は……お察しの通りの展開でした……やっぱり回転が止めだったっぽい……かな……?



 とてもとてもお見苦しい所を見せてしまったけど、二人とも大丈夫だと言ってくれて、落ち着くまで介抱してもらいました。後片付けや着替えまでさせてもらって、もう情けないやら……。

 獏くんはフェンさんにこれからはさっきみたいなパフォーマンスは控えるようにって再度釘を刺されてました……ちょっぴりきつめにね。

 顔は笑ってるんだけど、目は笑ってない系のやつね。

 国王様を正座させてね、前に仁王立ちって言うシュールな絵面ですわ。怒られ方が子供のそれよね。

「バクゥ様~?ヒカゲ様をお愛しいのは良く良く存じておりますよ~?ですが~、先程も申しました通り、まずはご母体を案じて差し上げなければいけませんよ~。私共のように丈夫ではないのですからね~?」

「はい……申し訳ありません……!」

「ご懐妊したからといって安堵するのは早急ですよ~?今のヒカゲ様のお身体は非常に繊細なのです~。新たな命を育もうとしているその時に、何かあっては取り返しが付かないのですよ~?」

「ま、全くその通りです……」

 フェンさんに言葉を掛けられる度に、反省からかどんどん獏くんが小さくなっていくようで……いつもの凛々しさはなりを潜めてしまっているわ……見てるこっちまで痛々しくなってきたよ……うう。

 その後ももう暫くお説教タイムが続いていたけど、彼が反省したのが目に見えて分かった所で、彼女は言葉を切った。

「ふふふ~分かって頂けたら良いのです~。少し辛い事も申しましたが~、これも老婆心からでございます~。ヒカゲ様の為、そしてまだ見ぬ御子の為、これからは父として、国王として励まれる事を切に願っておりますわ~。一番にお二人を守れるのは貴方様だけなのですから~」

「は、はい!先生の御言葉本当に痛み入ります……!これからもこの国の長として、ヒカゲさんの夫として、そして我が子の為、精進させて頂きます!!」

 そう言って獏くんは床に顔を打ち付けんばかりの勢いで頭を下げていた。それは見事な土下座スタイル……だったよ!

 元々獏くんって駄目な事はしっかり謝れる人だから、今まで何度も頭を下げる所を見てきたけど、今日のは過去一だったね、うん。


 この国で一番偉い彼を屈せる事が出来るのは……多分フェンさんぐらいなんだろうなぁ……流石育ての母は強いや……!

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