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日常生活は異世界で。  作者: 凍々
1/6

変化は突然に……??

前作から引き続いて2人の日常を書いていきたいと思っております。


相変わらずのグダグダ展開、散文・乱文・拙い文章ではございますが、良かったらお付き合い下さい。


 私はヒカゲ・クロム・ジン。旧姓は有野緋影(ありのひかげ)です。

 とある事故をきっかけに、夫の黒野獏ことバクゥ・クロム・ジンと共に人間界から異世界【テラリアン】に転移してから約1年ほどが経ちました。

 数々のアクシデントやサプライズ、妨害等を乗り越え、今はクロム国国王正妃として幸せに暮らしています。

 王妃として公務に励んだり、料理とかも練習を続けたのでほんの少しだけ出来る事も増えて、ようやく奥さんらしくなってきたかなぁって思っているのです。


 そんな毎日を過ごしていたある日、とある変化が訪れたのです。

 そう、あれは大体1週間ぐらい前に遡るのだけど……。


 いつものように起きて、獏くんの作ってくれた朝御飯を食べようと料理の前に座ったその時だった。

 何だか……胸というか胃の辺りがどうにもモヤモヤしてきて、吐くまでじゃないけど違和感があって、食べたい気持ちはあるのに、どうにも箸が進まなくって、結果いつもの半分以下しか食べられなかったのです。

 うぐぐと悔しい気持ちを抑えつつ、ごちそうさまを伝えたら、向かいに座っていた獏くんが唖然としたというか、驚愕の表情でこちらを見ていた。

「え!?ひ、ひぃちゃん……それだけしか食べないって……良いの……??」

「うん……ごめんね……何だかもうお腹一杯で……うぅ」

 喋るのも辛くなってきて、思わず口元を押さえてしまった。

 目の前にはまだまだ残る美味しそうなご馳走の山。それなのに……身体が食べるのを拒否している感覚。

 こんな事今までなかったのに……何で急に……??

 ま、まさか……私、何かの病気……とか……!?


 そんな事を考えていたら、胃のモヤモヤに加えて目眩までしてくる始末。

 あっ……駄目だ……座って……られない……!?

 ふらふらと俯いた私を見て、流石に様子がおかしいと気づいた獏くんがベッドまで運んでくれた。

「えっと……ごめんね、獏くん……。作ってもらったのに……ご飯残しちゃった……」

「ああ、その事は気にしなくって平気さ。それより……急にどうしたんだい?君には申し訳ないんだけどさ、あんなに食べないひぃちゃんって見た事ないんだけど……?」

 さらっと食いしん坊判定されててちょっぴり来るものがあったけど、それ以上に自分の体調の異変の訳が分からなくて、何も言えずにただ首を振るしか出来なかった。

 獏くんがとても心配そうな表情で、私の頭や額、頬をそっと撫でていく。

「うん……熱はないようだけど……顔色が少し悪いようだね……どうしたっていうんだろうか……」

 いつもの笑顔はなく、明らかに不安を隠せていないおろおろした様子の彼。

 普段なら何かしらの解決策を思いついてくれるんだけど、今回はどうも上手くいっていないみたいだった。

 その後、獏くんは薬を調合して持ってきてくれたり、食べられそうものを持ってきてくれたり、病気に良いとされる呪文を唱えてくれたり、悪いものを祓う効果がある魔石なんかを持ってきてくれたりと色々介抱してくれたんだけど……残念ながら効果なし。

 目眩に関しては横になっているので少し改善されたけど、依然として胃のモヤモヤは続いたまま。

 お互いにおろおろしている内に今日の公務の時間になってしまい、獏くんは部屋を離れる事になった。

 彼は公務より私の方が大事だと、公務をキャンセルしてまで部屋に一緒に居てくれようとしたけれど……それは私から断った。

 一緒に居てくれようっていうその気持ちは嬉しかったけど、夫である前にこの国の王様なんだもの。

 彼の采配を待ち望んでいる人達が沢山いるはずで、もしかしたら国の存続に関わる事もあるかもしれない。気持ちだけ受け取るねって、私は大丈夫って、帰ってくるのを待ってるねって、吐き気を抑えながら何とか思いを伝えてみたら、獏くんはかなり迷ったようだったけど、予定通り公務に向かう事を決めたみたい。

「ひぃちゃん……本当は君を置いて離れたくはないけど……行ってくるよ。すぐに、すぐに片付けて戻って来るから!!」

 去り際に私の額にそっとキスをして、獏くんは【空間転移】でその場から消えていった。


 そうして一人になってしまった私。

 気持ち悪さと目眩で上手く働かない頭を何とか動かして、今回の原因になりそうな事を昨日の行動とかと照らし合わせて考えてみることにした。

 昨日は確か……隣国のフロン国に夫婦で公務で行ったんだよね。内容は復興状況の視察で。まさかその時に何か悪い呪いでも掛けられたりとか?でも、そんな事があったら獏くんが気づかない訳ないし……それはないかも。さっき悪い呪いも祓う呪文も聞いたけど、彼が言うには悪いものは反応なかったって言ってたし……。

 そうしたら……何か悪いものでも食べたっけ……いや、獏くんの作った料理に限ってそんな事はないよね。私が作ったんならその可能性は大だけど……。

 でも、食中毒ってなった場合、その何かしらを食べてから2時間ぐらいで症状が出るって聞いた事があったような……という事は食べ物関連じゃないって事……??

 と言うか、朝起きた時は何ともなくって、食卓に着いた時からこうなったはず……えっと……そうすると……どういう事??

 よくよく気絶する癖のある私だけど、それ以外の体調は結構良くって、滅多に風邪も引かないし、大きな病気もしたことないのが密かな自慢だったのですよ。

 これまでの人生、思い出せるだけ思い返してもこんなに急に具合が悪くなった事なんてなかったから、今は本当に戸惑いしかなくって……私ってばどうしちゃったんだろうか……うぅぅ……。


「……ちゃん、……きて……!」

 ……ん?誰かが呼んでるのかな……?

 いつの間にか閉じていた瞳を開けると、そこには待っていた人の顔。眉根を寄せ、青ざめた悲痛な表情でこちらを見ていた。

「……獏くん……?」

「ひぃちゃん!?ああ、良かった!声を掛けても反応がなかったから……心配してたんだよ……!」

 予想なんだけど、あれこれ考えている内に多少薬が効いて眠ってしまったか、パニクりすぎて気絶したかっぽいです。そう説明したら、獏くんは少しホッとしたように笑った。

「そっか、さっきのが少しは役に立ったんだね!さっきよりは顔色も良いし……吐き気とかはどう?」

「うーん……目眩は収まったみたいだけど、モヤモヤは相変わらず……かな……うぅ」

 口元を押さえつつ、獏くんに話していると、彼の背後に控えている人に目が向かう。

「えっと……どうして……フェンさんがいらっしゃっているの……?」

「ん……あ!そうだった、忘れてたよ……」


 獏くんが慌てて背後の人物を呼び寄せると、のしりのしりと歩く人影が近づいてきた。

「ふふふ、バクゥ様にお願いされてきましたわ〜。お久しぶりです〜、ヒカゲ様〜」

 ニコニコと微笑む大柄のこの女性はフェンさんと言って、獏くんの恩師であり、クロム国の五本指に入るほど凄腕の魔術師である上、祭祀の場の祭祀長を務めるかなり身分の高いお方。だけど、身分の差なんて関係ないと、皆に分け隔てなく接してくれる慈しみ深く優しい女性なのです。私が人間界から来た異邦人(ヨソモノ)である事を知っても、怖がったり貶して来る事なんかなくって、まるでお母さんのように優しく受け入れてくれたのです。ご自身も幼少時に差別されて辛い目にあっていた事も教えてくれて、何処かシンパシーを感じる人なんだよね。私は物心付く前に両親を亡くしてしまっているので、お母さんらしさってのは良く分かんないけど、心の中ではお母さんって密かに呼んで慕わせてもらってます。ウサギ耳も可愛いのよ……!!

「バクゥ様から伺いましたわ〜。体調が思わしくないとか〜?」

「フェン先生は医療関連の魔術が特にお得意なんだ。俺は残念ながらその方面は得意じゃなくって……だからひぃちゃんを看てもらう為にお願いしてきてもらったんだよ」

「は、はぁ……ありがとう、ございます」


 獏くんから簡単に症状は聞いていたみたいなんだけど、改めて教えて欲しいと言われてフェンさんからお願いがあって、分かる範囲で今の具合を伝えた。

「なるほどね〜。じゃあ、ちょっと失礼するわね〜。あ〜、申し訳ありません〜、バクゥ様は一旦離れて頂けますかしらぁ〜?」

 彼女の言葉を受けて、宜しくお願いしますと獏くんは1つ礼をした後、一旦その場を離れた。

 獏くんがいなくなった事を確認してから、フェンさんが私に向き直って話す。

「……では、これから診察させて頂きますわ〜。少〜しだけ魔術を使わせて頂きますけど、痛みとかはないから安心して下さいね〜」

 上着とか開いた方が良いのかなと思ったんだけど、そのままの体勢で大丈夫だって。

 分かりましたと私が頷くと、彼女は横になった私の身体の上にその大きな両手を翳して、【解析(レント)】と一言呪文を唱えた。

 すると、彼女の両手から薄い水色の光が溢れ出して、水のように滴って私の肌に落ちていく。落ちた光は細く網目上に広がりながら、私の身体全体を覆っていった。

 色の所為もあるのかもだけど、ちょっとひんやりした空気が来ていて何だか気持ちいいな……。

 彼女はふむふむと何度も頷きながら、何かを読み取っている様子。

「う〜ん、バクゥ様の仰っていた通りで特に呪術の気配はないようね〜。となると、何処かに病原があるって事かしら〜??……って、あら〜!?」

 何かに驚いたのか、一瞬だけ彼女の目が見開かれたのが見えた。

 へ!?あら〜!?って何!?もしかして……本当に何か悪いものでも見つかってしまったとか!?

 嫌なイメージが浮かんでしまって、思わず身を起こそうとした私を、彼女は優しく制した。

「ああ〜、驚かせてしまったみたいでごめんなさいね〜。これからご説明しますので〜、とりあえずそのまま横になってお待ち下さいな〜」

 そう言うと、フェンさんは獏くんを呼んできてくれて、彼も交えて今回の診察の結果を聞くことになった。


 私はベッドに入ったまま、獏くんはその隣に腰掛けて私の肩を抱いている。

 そしてフェンさんは……座れる椅子がなかった為、申し訳ないけど立ったままで私達を前にゆっくりと話し始めた。

 ニコニコと微笑む彼女に対して、不安で一杯の表情の私達。どんな結果なのかと緊張から思わず夫婦で息を飲んだ。

「ふふふ〜、ではご両名揃った所で今回の診察のお話をさせて頂きますわ〜。あらあら〜、そんなに固くならなくっても平気ですからね〜?」

 そんな私達を見てか、肩の力を抜いてどうぞゆったりと……って言ってくれたものの、一度過ぎってしまった悪い結果のイメージが消えなくって……。

「すみません、先生……私達の様子は気にせず……お話をお願い致します……!」

「そう〜?では……結論から申し上げますわ〜。正妃ヒカゲ様の体調の異変についてですが…………おめでとうございます〜!ご懐妊ですわ〜!!」

 満面の笑みで私達に拍手を送る彼女に対して、思っていた結果と違った事に安堵しつつも、言葉の意味が飲み込めずにポカーンとしてしまう私達。

「あらあら〜?お二人共驚き過ぎて言葉もない感じかしらね〜?まあ無理もないわね〜、お二人共初めての事ですものね〜♪」


 えっと……ご、ご懐妊という事は……妊娠したって事で……つまり子供が出来たって事……だよね!?

 私の中に……新しい命があるって事……なの?

 ほ、本当に?こんな私でも……ママになったって事なの??

 嬉しい事なんだけど……今はただただ驚きしかなくって……えっと……どうしよう!??

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