将棋しようぜっ!
楽しんで書いたので頑張って読んでください
「私、大橋が四段に昇段したことを御報告させていただきます」
そう言うとフラッシュが焚かれた
あまりの眩しさに目を瞑りそうになったがガマンした
なんといっても四段に昇段したお祝いの席だから
師匠がせっかく開いてくれた昇段のお披露目会
少しのミスも許されない
序盤の一手損は後で駒損となって返ってくるのだから
師匠はというと将棋連盟のお偉いさん達に捕まっている
まるで穴熊で丸焼きにされたみたいだ
頑張って抜け出すことを願おう
「それではこの辺で大橋四段に昇段の喜びと今後の抱負ついて聞いてみましょう」
MCの人が話を振ってきた
さすが協会オススメのプロ
イイ仕事してくれる
素人の私相手であってもスムーズな進行
まるで一手角換わり損のような定石を見ているようだ
何度も同じような会の司会をしているから慣れているのだろう
その点は協会に感謝した
かわりに師匠がガチガチに恩を売られているけど、そこは見なかったことにしよう
・・・面倒な対局の立会人をやらされるか、次期の協会の役員になるのかな?
「まずは師匠と兄弟子、そして弟弟子に感謝したいと思います」
ミエミエのお世辞をいうと兄弟子達が苦笑していた
「兄弟子にはいつも厳しい指導をして下さりありがとうと言いたいです、そのおかげをもちましてこのたび昇段の運びとなりました」
さらに褒め殺しをしておいた
これで文句はでないだろう
「弟弟子にも感謝しています、中学生になる頃には四段に上がっていると噂されるほどの将来有望な天才ですから、VSのたびに追い越されるのではないかとヒヤヒヤでした」
弟弟子も持ち上げておいた
何せ史上何番目かの中学生棋士の誕生と呼び声が高いのだ
媚を売っておこう
本人は嫌そうな顔をしていた
さすがに小学生だけにお世辞200%の褒め殺しは居心地が悪いようだ
・・・決して、日ごろ負け越しているイヤガラセではないんだよ
「今後ですが、プロになったからには歩突きのように一局一局丁寧に進んで行きたいと思います」
今後の抱負は無難にまとめてみた
現役の棋士の反応はとみると笑顔でした
どうやら無難が正解だったようです
ここで名人とか言うと桂馬の高飛び歩の餌食になっていたことでしょう
・・・いやマジで本気になって潰しにくるんですよ?
実力だけが判断の基準ですから
上を目指すんだら今後のために本気を超える本気で相手してやろうとか
大人げないとしか言いようがないです
なんといっても別名、鬼の住み家ですからね
常識を期待してはいけません
強さだけが正義
・・・どこかの野菜のアニメと言えば判りやすいですか?
「最後になりましたがこのたびはこの会に足をお運び頂きありがとうございます」
最後も無難にまとめてみました
挨拶が終わるまでが将棋、ですからね
礼に始まり礼に終わる
これが伝統です
師匠の師匠やその弟子筋、同じ方面の棋士がわざわざ足を運んで出席してくれたのです
あ、後、協会の偉い人達と取材の人達も、ですね
思惑がどうであれ感謝を忘れてはなりません
<<<<<<パチパチパチ>>>>>>
盛大な拍手に包まれて史上初の女性棋士である大橋 香四段のお披露目会は無事に終わった