孤の葉の願い(このはのねがい)
覗いてくださりありがとうございます。
ここは、木の葉の世界。
芽吹き、光を得て、散りゆくまでの生を、各々が精一杯に生きる世界。
私は、ただひとり、変わらずにある。
舞い散る木の葉たちを見送ってきた。
そうだね、孤の葉と名乗ってみよう。
「いちは、今日の守備はどう?」
「ちいそはこそ。なんだか元気がないよ」
「ちいそはそろそろ枯れ時だからね」
「やそは、そんなこと言わないで!」
「いちは、本当のことだから」
さやさやと、木の葉たちはおしゃべりをする。明るくて、寂しい。
「いちは、きみは生まれたばかりだから、枯れ時を見るのは初めてだろう?枯れ時を、よく見ておいて」
「ちいそは……、うん」
「そうそう、木の葉たちはいつか枯れるんだ。しっかり覚悟を決めないと。いい機会だよ」
「やそは、そんな言い方!」
「ほんとうのことだろう、ムキになるなよ。いちは」
ざわり、と空気が震える。
「ああ、もう時間だねぇ。さようなら。いちは、やそは。楽しい時間をありがとうね」
「ちいそは……。いちはも!いちはも楽しかったよ!いっぱい教えてくれて、ありがとう!」
「ちいそは、やそはもすぐ行く。寂しくはないだろうさ」
ちらちらと風に乗って、いくつもの木の葉たちが舞い散る。それはいっそ幻想的な、そんな光景だった。
ああ、寂しいなぁ。友人たちが散っていく。
私はまた、残されていくのか。
ああ、でもそうだな。寂しいが、寂しくない。
友人はまだいるからな。
散っては芽吹き、私を独りにはさせない。
やはり、孤の葉という名はふさわしくないな。
私は神樹。
この世界が、ああ、永遠に続きますように。
読んでくださり、ありがとうございます。