私の眠る場所
愛した花があった
とても美しく清らかで
何ものにも染まり何ものにも染まらない花だった
私の涙を吸って透ける花が
私の心を透かすようで何故だか安心した
甘い実を食すのが私の密かな楽しみだった
誰にも知られないように
月の光や赤い夕日のしたで一人密かにあの実を探した
制限された一人で食べる味気のない食事に
辟易としていたのかもしれない
でもきっと隠れられてはいなかったのだろう
気付くと寝室にあの花があった
あの花が
私が
閉じ込められたようで
何故だか無性に怖くなった
知っていたはずなのに
理解していたはずなのに
私は理解出来ていなかったのだろう
あの花に自分を重ねて
野に咲く花にでもなったつもりでいたのだろう
何不自由ない生活をおくりながら
自由な生活をおくれない私は
あの花に自分を重ねることで
自由になったつもりでいたのだろう
あの花が咲く二ヶ月を過ぎ
少し気落ちした私を
慰めるために用意された
偽物のあの花は
偽物などすぐに用意できると
かえなどいくらでも効くのだと
言外に伝えられたように感じて
何故だか少し冷静になれた
私が居なくなっても大丈夫
私を必要としてる人は居ない
私の代用品が用意されている
私は一人だから何があっても
誰も悲しまない
ああ、必要ない必要ないんだ
誰も私を必要としていない
私も私を必要としていない
誰にも必要とされていない私は
居なくなってもいいのではないだろうか
何不自由ない不自由な生活から
逃げてもいいんじゃないだろうか
次にあの花が咲く季節が来たら
あの花と一緒に眠ろう
そう考えるだけで
生まれて初めて
自由になれた気がした