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第1話 アリスティアという男

アリスティアという男は、産まれながらの貴族ではない。はっきり言ってしまえば成金である。

今の暮らしぶりが出来るようになったのは彼が物心ついてから何年か経ったくらいからで、彼の祖父が“何か”をしたかららしいがアリスティア自身はその何かなんて興味もなければ他者から語られたことも無かったので知る由もなかった。土地さえ有れば金は入る。

“金だけ貴族”の彼はお貴族様達に嫌味を言われることが我慢ならないようで、プライドばかり高い割には社交の場に姿を現わすことも慈善業をすることもほとんど無かった。血筋や仕事の面でも彼は貴族ではなかったのだ。


しかし皮肉なことに、いわゆる“悪役”然としている冷たく美しい風貌は、どこまでも貴族的であり、またその性格も、格下の人間を苛め抜く陰湿さや、だらしのない程の好色さ、常に他者を見下し自らの地位を鼻にかける傲慢さも物語でよく目にする“悪役貴族”そのものであった。



「お前は安かったからね、お前に期待なんてしてないよ」


奴隷であったサヤを買ったのもただ単に気まぐれに過ぎなかった。自分に楯突くことさえしなければ身分など気にしなかった彼は“賤しい奴隷”を一番のお気に入りにしていた。

この国の女より小さい身体は自分の男としての矜持を高ぶらせたし、周りにはいない異国の顔だちは連れ歩くには中々で、そして何より“酷いこと”をした時に泣き喚かずに啜り泣くのがサヤをアリスティアのお気に入り足らしめる大きな理由の一つだった。


「サヤ、今日はお前の好きな卵料理をたくさん作らせたからね」



アリスティアは気付かない、いくらお気に入りといえど“奴隷なんか”の好物をテーブルいっぱいに広げて睦言のような声で囁き、食事を共にするなど、自分の使える主人に辟易している使用人達に。


自分いつまでも“貴族”になりきれないことに。

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