第十三話「カレーの日」
「今日はカレーです」
「わーい」
「しかし、ここで残念なお知らせがあります」
「なんでい」
「ご飯を炊き忘れました。ごめんなさい」
「許そう」
「やったー」
そんないつも通りのくだらないやり取りを済ませると、私はエプロンを脱いでハンガーに掛け、さっさとテーブルに着いた。スプーンを手に取りながら、普通に謝罪をする。
「いやあ、ホントごめんね」
「たまにはいいんじゃない? ほら、あんまり食べ過ぎるのもアレだよ。きっと。あ、いただきます」
「アレっていうのがどれかはわかんないけど、フォローありがと。ってか、日向はもっと食べたほうがいいよ。細すぎ。おっと、いただきます」
言うと、日向の目線がちらと私の胸元に向いたのがなんとなくわかった。私はスプーンをがちゃんとカレー皿に叩きつけ、にっこり笑顔で問い掛ける。
「私のスレンダーさに見惚れてたのかな?」
「なに言ってるの? 俺は文目の身体ってだけで全部大好きなのに」
うわお、不覚にもドキっとしたぜ。このスケコマシ野郎が。ま、こんなんで照れるほど私は女々しくないんだけれど。
「……」
「いや、そんな露骨に照れられると俺も恥ずかしいんだけど」
「照れてないやい!」
「ああ、ほら。カレー零してるから」
「か、かたじけない」
ティッシュを手渡されて、テーブルやら口元を拭きまくる私。なんだかなあ。私ばっかり日向にドキドキさせられているようで、少しだけ悔しかったです。
「カレーだけってのも結構いいね」
「そうですね。おじいさん」
「ですねー。おばあさん」
「何を。私はまだピチピチピッチだぞ」
「俺もだよ」
「うへへ」
「うはは」
そんな何の変哲も無い、いつも通りの食卓の風景。そんな当たり前の日常が何よりの宝物、だなんてくっだらねーことは言わないけれど、日向といる毎日は前よりも少しだけ充実している。
ふと、同棲も悪くないと、そう思った。




