第一話「同棲始めました」
恋人と同棲を始めるという、大学生ならば誰もが一度は夢見るであろうシチュエーションに、しかし私は大して心踊ったりもしなかった。むしろ、そうなるべくしてそうなったというか、いずれそうなるだろうと頭のどこかでは思っていたから、喜んだり驚いたりというのも特になかったのだ。アイツに同棲を提案された時も、本を読みながら二つ返事でオーケーしたし。
昨日、引っ越し屋さんに荷物を運び入れてもらって漸く「ああ一緒に暮らすんだな」という実感が湧いた。私もアイツも元より一人暮らしだったし、これまでお互いの部屋に行き来して寝泊まりしていたことの延長だと思えば、初日の夜も別段、特別だとは感じなかった。同棲一日目を終えて何か感想があるかと訊かれれば、即答で「ない」と答える自信がある。ていうか実際ない。なんと言うか、私にとってそれくらい自然なことなのだ。アイツと一緒にいるっていうのは。
だから何か不都合とかがない限りは、とりあえず同棲も続けてみようと思う。まあ、一人で惰眠を貪ったりレポートをサボったりと怠惰な生活を送るよりはずっとマシだろうし。
いやあ、リア充ですね。私ってば。