03
ある日の休み時間。
ある日、と言うのは俺も適当に表しすぎたので具体的に言うのなら五月二日の休み時間。 更に言うのなら、委員会が生活安全委員会に決まってから一週間ほどした今日ーーとでも言うべきか。
そんなある日の休み時間、俺と花京院は校舎の見回りをしていた。
これも委員会の仕事らしい。
「問題はなさそうだし、戻ろうぜ」
「いや、もしかしたら……というではないか」
「はいはい」
もしかしたら、と言ってもこの学園に問題を起こすような奴がいるとは思えないのだけれど。
まあ、それは俺の考えなのだけれど。
確かに花京院のいうもしかしたらが起こってしまうかもしれないし……今まで数回ときていて起きてはいないが。
「む? あれは……」
花京院の視線の先には女。
女に興味がないと思っていたのだが、実は興味があったのか。
……お前なら落とせるよ、イケメンだから
「あれは何をしているのだろうか」
「さぁ? ま、いいじゃん。 いこーぜ」
「しかしだな……」
中々引こうとしない。
そんなに気になるのなら見に行けばいいのに、というか俺に見に行くか、とか言ってもらえるのを期待しているなら無駄だぞ
俺は興味ない。
というか、早く教室に戻りたい。
授業って凄いだるいけれど凄く大切なんだぞ。
「なにみてんだよ」
少し低めのソプラノの声が聞こえる。
廊下の窓から煙草をふかしながら長い金髪を揺らしてその女は俺達を鋭い視線で此方を睨みつけるようにして見てくる。
おっかない女。
目付きも悪いし、髪は金髪(もしかしたら地毛かもしれない)、しかも煙草を吸っているときた。
「煙草は校則違反だ、これから吸うのをやめるというのなら此処は見逃してやらなくもないが」
「はいはい、やめますやめます」
絶対辞める気ないと思うけどな。
本当に見逃していいのか花京院、絶対校長室に連行がいいと思うのだけれど。
まあ、君が良いなら俺は構わないのだけれど。
女が立ち去ってから花京院は小さな紙を取り出して俺に見せる。
「みろ篠宮」
生活安全委員会の教室に貼ってあった紙のコピーのようなものを花京院は俺にみせた。
俺がそこに視線を移すと花京院はある一点を指差した。
「ーー安藤美郷」
安藤美郷の名前の上の写真は先程の女の顔で間違いは無いのだが此方の顔の方が可愛らしいというかマセてないというか……
まだ純粋そうに写っている。
「要注意人物の一人だな、ほら此処をみろ。 煙草、脱走の常習犯だ」
「うわ、本当だ」
まあ、今日偶々会ってしまったーーというだけで俺には関係ないのだけれど。