02
休み時間終了の鐘が鳴り響いたのと同時に花京院は俺の方に向きを変えた。
決して友達がいないわけではないと思うのだけれど何故俺に構う。
あ、あれか。 同情的な。
「このクラスに飾ってある花はな。 プリザードフラワーというのだ。 枯れない花だし見ていて悪い気分にならない、と言うことで神城嬢が飾られたのだ」
「ただの生花かと思ってたけどそうじゃないんだな」
「うむ、篠宮も気に入ったのなら僕が今度用意しておこう」
いや、結構です。
なんか悪いし、別に寮の部屋が同んなじだとかそういうんじゃないんだし、そんなに俺と話していなくても…
「いや悪いからいいよ」
「構わん。 友人なのだからな」
花京院の光のある綺麗な瞳が俺の方へ向いた。
「友人か……じゃあ、頼もうかな」
「了解したぞ。 後日寮に届けに行こう」
「悪いな」
机から教科書を取り出し目を通し始めると花京院は「感心するくらい真面目なのだな」と俺を見ながら呟くように言葉を発する。
「なんて言うか癖なんだよ、教科書見るの」
「癖……?」
「休み時間に予習しねぇとクラスキープ出来ねぇからさ俺」
「実技は学年トップではないか」
教科書を黙読している俺に声をかけてきた花京院は相変わらず楽しそうな顔をして笑っている。
「それはそれ、これはこれ」
「む? そうなのか? てっきり僕は篠宮はオールマイティなのだとばかり思っていたのだが」
違うのか? と目の前の男が首を傾げる光景を見て一体この行動で何人の女子生徒を落としてきたのか知りたい物だ。
天然なのか確信犯なのかはわからないが、俺は花京院真琴という人物はきっとこれを無意識にやっているに違いない。 そうだと信じたい。
「そうだ、篠宮。 僕と同じ委員会に入らないか?」
「変なのじゃないなら良いけど」
かくして俺は何故だか本当に何故だかわからないが、生活安全委員会だとかいう絶対名前サボっただろと言わんばかりの名前の委員会に入れられていた。