ちから。
ボクは、もどかしくて、苦しんでるあなたの力には、なれないのかな。
バスケのボール。
魔法のように、手に吸い寄せられてく。
脚の間を、潜り抜けて。
天高く、弧を描いて飛んでゆく。
ボクにはそんな芸当、とてもできやしないよ。
考えられないほど速いスピードで、動き続けるあなた。
その姿を追うのに精一杯のボク。
能力は、全然違うけれど。
力になることは、できないのかな。
「ハンドリングが落ちてる。こんなん、試合じゃ通用せん」
悲しそうに、悔しそうに呟く君。
忙しくて、部活にいけなかった。
完全に、体がなまっていた。
ボクから見れば、十分にすごいのに。
でも確かに、前よりも鈍い。
俯いて、地面にしゃがみこむ。
硬いアスファルト。
「くっそっ……!」
石を地面にたたきつける君。
ボクは何もできないの……?
「わかるよ。わかる。もどかしいよね。悔しいのもわかるよ」
ボクも部活にいけていない。
今日、久しぶりに歌ったら。
全然響かない。
声量が出ない。
悔しくて、もどかしくて、つらかった。
「頑張ってほしいけど。体を、大事にして」
君の髪を梳くようになでる。
顔色が悪い。
疲れているのか。
「お願い」
「大丈夫、無理してないから」
一人で抱え込まないで。
頼って。
ふいに、君が抱きついてきた。
あれ?
いつもなら、君の方が高いのに。
足元を見て納得する。
数センチの段差があった。
ボクは、君の背に手をまわし、ゆっくりさする。
大丈夫。心配しなくていい。ボクがいるよ……?
「寂しかった……」
すねたような声が、耳元で聞こえる。
「うん。自分も、寂しかった」
温もりが、伝わってくる。
ボクのちからも。
ボクのおもいも。
伝わりますように。