~分岐前?~
「俺らと同じ高校の学ランを着ているんだろ? ということは俺らと同じ高校の生徒なんじゃね? 他校の人が俺らの制服を着るわけがないだろうしさ」
「あ」
『あ』じゃねぇよ。気付けよ。普通に考えろよ。
なんですかそれは、コスプレでもしているのですか?
野郎が学ラン着ることは誰得なんだよ。
美男子のカップリングなら……? はっ! 一体俺はなにを!?
「と、ということは! うちらと同じ高校に通う生徒ってことだね!」
あくまでもまだ可能性の範囲内だけどな。
ただのコスプレ野郎だったらどうしよう? まぁ別に問題ないだろうし、ほっとくか。
「その可能性が高いと思うぜ」
逆に俺と見間違えた、って可能性も高くなるけど……
まことに不承不承ながらも、この町に現れたという吸血鬼といくつかの共通項がみられることを認めよう。
「じゃあ! これで夜道とかも安心だね」
なんでやねん。
「だってね、吸血鬼は怖いのですよ? みんなで集団下校とかに気をつかうじゃん。もしなにかあった時のために三人以上の人数で帰るのがベストなんだよ」
「たとえ三人で帰ろうと百人で帰ろうと相手が化け物だったら対処のしようがないけどな。不審者とかだったらまだしも……」
その対処法はベターではあるかもしれないけど決してベストではないと思う。だいぶ暖かくなってきたし露出狂とかも怖い。……あれはマジで怖い。トラウマものだよ。二度とごめんだね。
それ以上に人は予測のしていない場面に直面した場合、不審者や吸血鬼に遭ったら多分気が動転してしまうだろう。
「でも結局、こうして白ちゃんと二人で帰っているわけだし……」
「? そうだな。男がいる方が安心出来るよな」
「そういうわけじゃないんだけどな……」
彼女は少し拗ねたような顔をした。なんで?
***
「……ねぇ、白ちゃん。白ちゃんって兄弟とかっていたっけ?」
彼女の声は少し震えていた。
今思えば、ここから俺の生活は急転直下したんだろうな。
今の俺が俺であること。
今の俺を『俺』と断定するには必要不可欠な要素。
それは、これから起こる出来事に関係する。
だから、もし家に直行していた場合の『俺』は『俺』ではなく全く別の人間になっていた思う。
もしも、ホントにもしも。
君がいなかったら俺はどんな人生を歩んでいたか分からないけれど。
多分、君のいない世界の俺はつまらない人間で、惰性に過ごし、怠惰に生きて、堕落して、嫉妬しかせず、嫉み、妬み、人を害し、自分を壊し、この国を嫌い、世界に嫌悪感を抱き、憎悪にまみれていたと思う。
言うなればここが人生の分岐点だ。
分岐点というものは毎日まいにち沢山あると思う。
小さな分岐はさして問題なんてものは、ない。
それこそ、お昼にジュースを買うかお茶を買うかとか。
学校に自転車で行くかバスで行くかとか。
そういった小さな分岐はどれを選んだとしてもさして未来には影響がない。
だけど交通事故で腕を切断しただとか。
ライバルに脇腹を包丁で刺されたどとか。
そういう大きな分岐点も混在している。困ったことに。
その分岐点以前と以降とではものごとがガラリと変わってしまうのだ。
俺にも起こったんだよ、事件が。
とびきりビックで誰もが驚きそして忘れられない出来事。
吸血鬼に出遭った。