~キミとの会話~
平々凡々。少なくともこの町は平和だ。男女で仲良いし、一緒に弁当をつついたりしている。
平和万歳。
弁当の時、俺は席を動くことはない。なぜならいつも周りに人が寄ってくるからだ。
日によって男子であったり女子であったりとばらばらだけどね。
食事の時はいつも色々な情報交換が出来る。
最近のニュースとか芸能人とか歌手の話とか。
たまに俺がいるのにガールズトークを始めることがあって反応に困る。
お昼休みは十二時半から一時十五分。青春を謳歌している高校生にとっては短い気もするが、規則なので従うしかないさ。
いつも時間ぎりぎりまで、楽しく過ごしているのは本当に楽しい。
他愛ない話から、恋ばな。あの子が可愛いいだの今日のオカズは…………
さっき一緒に食べていた人は俺の話をいつも聞いてくれるプチアキバ系の女子だ。最近は彼女とよくご飯を食べているな。
「カ~マちゃん」
「ん?」
「見せ付けてくれやがりますねぇ。イチャイチャイチャイチャー」
「は~? どこがイチャイチャしてんだよ~。そんなこと言いだしたら世の中にはバカップルだらけになっちゃうぜ」
「ん~? カマちゃんと~、アッキーの~ラブラブチュッチュッな話。いや~、『あつだ、夏いぜ!』って感じだね。人の視線をもろともしないのはある意味凄いけど、TPOはわきまえようよ。ねぇ、カ~マちゃん!」
ニコーって、すごく嬉しそうな顔をしやがりますね、キミ。
「噛み合ってないし……つーかさ、カマちゃんって呼び名、そろそろ止めね? やっぱり恥ずかしいのですよ、そのあだ名」
何時の間にか定着したあだ名は『白ちゃん』と『カマちゃん』。色が白いから『白ちゃん』っていうのはまだ分かるけど、カマちゃんって……
「だってさ~? カマちゃんはなんだか男の子っぽくないんだよね? いや、確かに男ではあるんだろうけど、女子の中にまざっていてもなんら違和感ないし、実際にいつも会話しているしね~。それにカマちゃんさ、声変わりしてないから女の子っぽいもん。もういいじゃんカマちゃんで、別に嫌じゃないしょ?」
でしょ? って可愛いらしく首を傾げられても困るのですが……
「普通に嫌だから」
「え゛~~~~?」
「なにその不満そうな声と視線は?」
カマちゃんと親しく呼ばれるのは別に悪い気はしないのだけれど、なんと言いますか、一般男児としてやっぱり嫌なのですよ、馬鹿にされているみたいで。
「カマちゃんはカマちゃんなの~。これまでも、これからも(キリッ」
「本当にどうもありがとうございました、って言わすな!」
「えへへ~、カマちゃんありがと~」
なんだかなぁ~このやり取り。
いつから始めたんだっけな、このカマちゃんのくだり。
確かに小学校中学校の頃は女の子っぽかったかもしれないのだけれど、今は背も高くなって正直カマちゃんはきつい。
「あ、チャイム……」
そんな名残惜しそうに言われましても……
「じゃ、俺、トイレよるところだったから」
「う、うん! バ~イビ~」
軽く手を振って別れた。